1990 Fiscal Year Annual Research Report
オレイン酸の純液体中におけるコンホメ-ションと液体構造の決定
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02640356
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
岩橋 槙夫 北里大学, 衛生学部, 講師 (70087120)
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Keywords | シスー9ーオンタデセン酸 / 液晶 / 液体構造 / 分子コンホメ-ション / NMR / ESR / 蛍光偏光解消度 / 液体X線散乱 |
Research Abstract |
高純度(99.9%以上)のオレイン酸の液体の凝固点があらかじめ液体を保持したときの温度領域で異なるという履歴現象や、密度、粘度、NMRによる自己拡散係数の温度依存性の結果から、オレイン酸は温度領域で異なる3つの液体構造をとるものと考えられた。そこでオレイン酸の分子のコンホメ-ションや液体構造の温度依存性をIRスペクトル測定、^1Hーまたは^<13>CーNMRの緩和時間T_1およびT_2の測定、ESRおよび蛍光測定、さらに液体のX線の散乱測定を行うことで研究した。 隔点から108℃の温度領域でオレイン酸は常に二量体を形成し、これが運動の単位粒子である。T_2の結果から、融点から30℃までかなり結晶的な性質が残っており、また蛍光の偏光解消度から、徴視的粘性も大きいことが明らかになった。T_1緩和時間から求めた各セグメントの運動性も温度とともに増すが、明らかに30〜55℃、そして55℃以上で異なった。同様の傾向がESRのオ-ダ-パラメ-タ-にも観測された。すなわちスピンプロ-ブの回りの徴視的環境の温度変化に2つの折れ曲り点が表われ、とくに55℃以上で急激に分子が動きやすくなることを示した。以上の結果から融点から30℃まではスメクチック液晶類似の構造、30〜55℃ではネマチック液晶類似の構造、55℃以上で乱雑な等方的構造であると推測した。ただし用いた液体オレイン酸は完全に無色透明で、偏光顕徴鏡の観察でもまったく液晶の存在が確認できなかったことから、液晶といっても液晶状態の分子の小さな集合体(ドメイン)が乱雑に集まった状態であろうと考えた。そこで20℃付近で液体のX線散乱を調べたところ、かなりはっきりしたリング状の回折パタ-ン(長軸距離として17.3A)が得られ、融点から30℃までのスメクチック液晶類似の構造の存在が確認された。
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Research Products
(1 results)