1991 Fiscal Year Annual Research Report
カルボニル化合物とカチオンとの錯形成を利用する光化学反応の制御
Project/Area Number |
02640394
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
久保 恭男 島根大学, 理学部, 助教授 (40127486)
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Keywords | 錯形成 / カルボニル化合物 / 励起状態 / 塩効果 / ケイ光 / カチオン / イミド化合物 / ルイス酸 |
Research Abstract |
平成3年度は,カチオン,ルイス酸との錯体が種々のカルボニル化合物の光化学反応に及ぼす芳香族イミド化合物とルイス酸との錯形成の解明を予定していたが,それに関して以下の知見が得られた。 1.カチオンとの錯形成は,ある種の芳香族カルボニル化合物の励起ー重項状態から進行する二量化反応の量子収率を非常に低下させ,また,芳香族カルボニル化合物の励起ー重項状態から進行するアルケンのイミドCーN結合への挿入反応を強く抑制することが明らかになった。 2.ケイ光スペクトルの測定より,ルイス酸との相互作用はカチオンの場合と同様に方香族イミド化合物の励起ー重項状態で起こっていると考えられる。またその際,ルイス酸の濃度を増すにつれ,一つの等発光点を示すスペクトル変化だけが観測され,この変化は1:1錯体の形成過程に対応すると考えられる。なお,基底状態におけるカルボニル化合物とルイス酸との相互作用は全く認められなかった。 3.ルイス酸との錯形成は,芳香族カルボニル化合物の励起三重項状態から進行するアルケンとのシクロブタン生成反応を抑制することが明らかになった。 4.メタノ-ルや酢酸エチルなどルイス酸に配位可能と考えられる溶媒を用いるとカルボニ化合物とルイス酸との錯会合定数Kの値の低下が見られたが,クロロホルムや塩化メチレンズでは大きなKの値が観測された。また,溶媒のアセトニトリルに水を小量添加するとKの値が大きく増加することが明らかになった。この効果は非常に興味深いものであるが,おそらくルイス酸と水との反応で生じたプロトン酸が錯形成を起こしているためであると考えられる。そこで,硫酸など種々のプロトン酸による錯形成を検討したところ,期待通りカチオンやルイス酸の場合以上に強い錯形成が認められた。
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