1990 Fiscal Year Annual Research Report
アルケニルスズ化合物の有機パラジウムによる脱スズ反応機構造の研究
Project/Area Number |
02640413
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
菊川 清 近畿大学, 九州工学部・工業化学科, 教授 (60037918)
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Keywords | アルケニルスズ / 有機スズ化合物 / 有機パラジウム錯体 / 錯体触媒 / トランスメタル化 / 求電子置換反応 / 炭素ー炭素カップリング / アリ-ル化 |
Research Abstract |
アルケニルスズとしてαーおよびβースズスチレン(Ph(R_3Sn)C=CH_2,PhCH=CHSnR_3:R=Ph,Bu)を選び、種々の方法で発生あるいは合成単離したアリ-ルパラジウム錯体(ArPd(L)_2X:Ar=Ph,4ーMeーPh,4ーNO_2ーPh,L=PPh_3,solvent,X=BF_4,OSO_2CF_3(OTf),Cl,Br,I,OAc)と反応させ、アリ-ル化脱スズ生成物を得た。中性配位子Lが配位力の弱い溶媒等の場合(Pd(dba)_2とArXから発生させるか、Pd(dba)_2とArN_2BF_4から系中で発生させた[ArPd]^+BF_4^ーへ過剰のNaX:X=Cl,Br,I,OAcを加えて得た)には、アニオン性配位子Xの種類によりその反応様式に大きな差が認められた。即ち、配位力の弱いBF_4^ーの場合、Ph(R_3Sn)C=CH_2との反応では、PhCH=CHArのみを与え、PhCH=CHSnR_3との反応ではPh(Ar)C=CH_2を主として与えることから、アリ-ルパラジウム種が二重結合へ付加した後、PdとR_3Snが脱離する、いわゆる付加脱離機構で進行いていると考えられる。一方、配位力の強いハロゲン等を配位した場合には、Ph(R_3Sn)C=CH_2からはPh(Ar)C=CH_2が、PhCH=CHSnR_3からはPhCH=CHArが得られることから、スズのついた炭素上での求電子置換反応よって、例えば前者ではPh(ArPd)C=CH_2を中間体とする、いわゆるトランスメタル化機構によって反応が進行していることを示している。一方、Lとして配位力の強いPPh_3が配位したArPd(PPh_3)_2X(ArIとPd(PPh_3)_4との反応で合成単離したArPd(PPh_3)_2IとAgXとの反応で合成した)との反応では、アニオン性配位子Xの種類によらずトランスメタル化機構で進行していることを明らかにした。これは、遷移金属錯体触媒を用いる炭素ー炭素結合生成反応における、反応経路の多様性を示すと共に、遷移金属上の配位子の重要性を明確に示すものであり、興味深い結果である。
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