1992 Fiscal Year Annual Research Report
渦鞭毛藻の産生する高次炭素鎖化合物の有機化学的研究
Project/Area Number |
02640423
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
上村 大輔 静岡大学, 教養部, 教授 (00022731)
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Keywords | 渦鞭毛藻 / 培養 / 高次炭素鎖化合物 / パリトキシン / ハリコンドリン / プリパスタチン / イチュリン / パラセルシン |
Research Abstract |
海洋生物は陸上のものに比較して担当長い炭素鎖からなる有機分子(例えばパリトキシン、ハリコンドリン)を産生する.このような海洋生物の特徴的代謝産物を高次炭素鎖化合物と名づけた。これらは単に50〜114個の炭素数を持つだけでなく、多くの官能基を有し構造が複雑な故に注目されている。本研究ではこのような高次炭素鎖化合物を渦鞭毛藻から単離し、その性質反応を研究することにより一般的な基礎概念を発見しようと試みた。過去2年間で得た渦鞭毛藻の藻体をメタノールで抽出し分離精製を行なった。その結果15ミリグラムの有毒物質を得た。各種スペクトル解析を検討したが、最終的な構造解明には至らなかった。本研究で苦労を強いられた大きな理由として非常に遅い鞭毛藻の生育があげられよう。培養フラスコの種類、培養性の選択等各規条件を変え検討したが、顕著な収量の向上はみられなかった。そこでより培養の容易なバクテリアに注目してその培養を進めた。その結果既知の環状ペプチド、プリパスタチン、イチユリン、サーファクチン、パラセルシンを単離した。いずれも抗力ビ性、抗菌性を示標として化合物を探索した。このほかに構造未知の抗力ビ性物質2種類得られているので構造決定を急く。これらのバクテリアはクロイソカイメンに共生しているものを単離した。オカダ酸、ハリコンドリン等の高次炭素鎖化合物の探索も目標としたが未だ発見には至っていない。 本研究で明らかになったことは、パリトキシンやハリコンドリンの真の産生生物として渦鞭毛藻が疑われているが、実際に渦鞭毛藻を培養すると類似した化合物を産生すると確認したことである。今後さらに検討を重ねここで得た未知化合物の構造を決定するとともに、バクテリアの培養で得た物質の構造も解明する。
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[Publications] D.Uemura: "Induction of Topoisomerase 1-Mediated DNA Cleavage by a New Indrocarbazole,ED-110." Cancer Res. (1993)
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[Publications] D.Uemura: "An Antitumor Substance ED-110,a Derivative of BE-13793C." J.Antibiotics. 45. 1797-1798 (1992)
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[Publications] D.Uemura: "Interaction of Antibody with the Complex of Okadaic Acid and Monoclonal Starfish Embryonic Cells Specific to Okadaic Acid." Biosci.Biotec.Biochem.56. 1666- (1992)
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[Publications] D.Uemura: "Biochemical Effects and Tumor Promotion of Okadaic Acid in Glandular Stomach of SD Rats." Carcinogenesis. 13. 1841-1845 (1992)
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[Publications] 上村 大輔: "トポイソメラーゼI,II阻害活性物質" BIOmedica. 7. 48-51 (1992)
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[Publications] 上村 大輔: "制ガン剤として大いに期待される物質ハリコンドリン" 海洋の研究. 11. 43-47 (1992)
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[Publications] 山本 敏弘,上村 大輔: "強力な抗腫瘍活性物質ハリコンドリンB,化学増刊121号,化学で探る海洋生物の謎" 化学同人,安元健編, 149-155 (1992)
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[Publications] 上江田 捷博,上村 大輔: "今世紀最大の快挙:パリトキシンの全合成,化学増刊121号,化学で探る海洋生物の謎" 化学同人,安元健編, 13-22 (1992)