1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02640455
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
市村 彰男 大阪市立大学, 理学部, 講師 (50047396)
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Keywords | 基準電位 / 基水溶媒 / フェロセン / 鉄カルボラン錯体 / 電極反応 |
Research Abstract |
電気化学反応の熱力学的,速度論的研究が非水溶媒中で数多く行われ,それらの溶媒効果についても研究が行われているが,溶媒効果を検討したり,他の研究者のデ-タを比較するためには,溶媒に依存しない基準となる電位が必要である.そこで,[Fe(cp)_2]^<+/0> (cp=cyclopentadienyl)と構造,電子構造がよく似ていて,酸化還元対の電荷については対称である[Fe(cp)(cb)]^<0/->(cb=ηー(3)ー1,2ーdicarbollyl)のE^<0'>と[Fe(cp)_2]^<+/0>のE^<0'>の平均値(E_<ref>)を基準電位とすることを提案した. [Fe(cp)_2]^+ + e^- 【double half arrows】 [Fe(cp)_2] E^<0'>([Fe(cp)_2]^<+/0>) (1) [Fe(cp)(cb)] + e^- 【double half arrows】 [Fe(cp)(cb)]^- E^<0'>([Fe(cp)(cb)]^<0/->) (2) E_<ref> = {E^<0'>([Fe(cp)_2]^<+/0>) + E^<0'>([Fe(cp)(cb)^<0/->)}/2 (3) 研究に用いた非プロトン性溶媒10種およびプロトン性溶媒6種のスべての溶媒中で,(1),(2)式で表される電極反応は可逆であった.提案した基準電位(E_<ref>)と[Fe(bpy)_3]^<+/->のE^<0'>の差は一定であったので,E_<ref>は基準電位と見なすことができる.また低誘電率溶媒では,イオン対生成によりそれぞれのE^<0'>が移行する。そこで[Fe(cp)_2]PF_6とBu_4N[Fe(cp)(cb)]のイオン対生成定数を電気伝導度法により測定した.その結果は[Fe(cp)_2]^+も[Fe(cp)(cb)]^-もどちらも同程度のイオン対生成定数であったのでイオン対の影響があってもE^<0'>の平均値をとるとその項は相殺されることになる.次にE^<0'>の温度依存性より電極反応エントロピ-を求め,Born式からの計算値との比較を行い、溶媒和に関する重要な知見を得た.また(1),(2)式のE^<0'>の差は溶媒効果を表現している.この差と溶媒の溶解パラメ-タの二乗との間に,直線関係があるという興味ある結果が得られた.
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[Publications] 馬越 啓介: "Dinuclear Palladium(II) Complex of Pyridineー2ーthiol.Synthesis,Structure,and Attempt to Oxidize to Palladium(III)Dimos." Inorganic Chemistry. 29. 4005-4010 (1990)
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[Publications] 市村 彰男: "A Reference Potential in Nonaqueous Solvents" Analytical chemistry.