Research Abstract |
(1)集積型二核および四核マンガン錯体ーー光合成系IIの水の酸化反応(2H_2O→O_2+4H^++4e^ー)には二核あるいは四核マンガン錯体が関与している。我々は,二核化配位子として2,6ーbis[bis(2ーpyridylmethyl)aminomethyl]ー4ーmethylphenolおよびtris(2ーpyridylmethyl)amine(N_4ーpy)を含む二核マンガン(II,II),(II,III),(III,IV),(IV,IV)錯体,およびN,N,N^',N^'ーtetrakis(2ーpyridylmethyl)ー1,3ーdiaminoー2ーpropanolを含む四核マンガン(II,III,III,II),(II,III,IV,II)錯体の新規合成および構造解析に成功した。これらの錯体の中で,N_4ーpy錯体の水の酸化触媒特性を示す兆候をみせたが,確証を得るには至っていない。今後の発展が期待される。 (2)二核鉄錯体ーー鉄タンパクたとえばpink uteroferrinやsemiーmethemerythrinなどには,二核鉄(II,III)混合原子価中心が含まれることが知られている。我々は,左右等価な構造をもつ二種の二核化配位子,2,6ーbis[bis(2ーpyridylーmethyl or 2ーbenzimidazolylmethyl)aminomethyl]ー4ーmethylphenol,とカルボン酸イオンとを含む二核鉄(II,II),(II,III),および(III,III)錯体の合成に成功した。それら錯体の電子,ESR,メスバウア-スペクトルおよび磁化率の測定結果から,(a)鉄(II,III)混合原子価錯体が同酸化数の(II,II)および(III,III)錯体に比べて安定化している。(b)鉄(II,III)錯体はクラスIIの混合原子価錯体である。(c)鉄(II,III)錯体の鉄イオン間には,弱い反強磁性相互作用を働いていることが明らかとなった。 (3)二核コバルト錯体ーー1,3ー(or 1,5ー)bis[bis(2ーpyridylmethyl)amino]ー2ーpropanolate(orーpentanolate)を含む二核コバルト(II,II)錯体を單離した。この錯体は分子状酸素と可逆的に反応し,酸素分子錯体開発の足掛りとなる点で極めて意義深い。 (4)その他ーー直線状シアン化物イオンを架橋配位子として含む二核クロム(III,III)錯体ではクロムイオン間に反強磁性相互作用がみとめられた。一方,銅(II)クロム(III)錯体では強磁性相互作用がみとめられた。
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