1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02640475
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
斎藤 直 大阪大学, 理学部, 助手 (50153812)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土江 秀和 大阪市立大学, 理学部, 助手 (30137187)
馬場 宏 大阪大学, 理学部, 教授 (60156536)
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Keywords | 低温核融合 / 重水素 / 水素吸蔵金属 / パラジウム / パイ中間子 / 中性子 |
Research Abstract |
重水の電気分解の際に陰極として用した水素吸蔵金属中で重陽子間の低温核融合反応が起こることが見出されて以来、低温核融合に対する数多くの実験的および理論的アプロ-チがされてきたが、まだ確定的な理解には至っていない。本研究では吸蔵金属中の水素の非平衡要素を高める方向の実験を行って、低温核融合の実現と検出を目指すとともに、その反応機構についての知見を得ようと努めた。核反応の検出は、陽子やγ線等も検討したが、高感度であると同時に試料の形態の制約を受けないという点から中性子測定を中心に行った。それには速中性子を陽子反跳液体シンチレ-ション検出器で測定し、パルス波形から中性子とγ線の弁別を行うが、CAMACデ-タ収集係の使用で、弁別能力の向上、時間情報の記録および後日のオフライン解析が可能になり、種々の実験条件の改善に役立った。電解実験においてはパルス電解や電解槽の低温化などを試みたが、核融合反応の徴候を見出すことはできなかった。他に、重水素ガスとパラジウム金属、チタン金属を接触させて吸蔵させた後、脱蔵させる実験も行ったが、中性子は検出できなかった。重水素を吸蔵しているパラジウム金属を燃焼させると、最も急激に重水素が拡散放出されると考えられるが、この試みでも低温核融合について否定的な結果を得た。さらに、重水素を吸蔵しているパラジウム金属の表面に銅などの水素透過性の悪い金属薄膜を電着して、重水素の放出を抑える条件下での加熱実験も行った。別に、負パイ中間子を水素吸蔵パラジウム金属に入射して、陽子と荷電交換して生成した中性パイ中間子の消滅γ線の高感度測定から、負パイ中間子の水素原子への捕獲確率を決定し、これより水素原子の価電子密度に関する情報を得た。水素原子の電子密度が極めて低いという結果を得たが、これは、水素原子核間のトンネル効果による低温核融合に対しては特に不利な状況であると結論できる。
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