1990 Fiscal Year Annual Research Report
多座配位子を含む人面体型錯体の異性化機構に関する研究
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02640481
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
川口 浩 高知大学, 理学部, 教授 (50036571)
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Keywords | コバルト(III)錯体 / 異性化反応 / 反応機構 / 立体選択性 / 不斉反転 / 光学活性 / 絶対配置 |
Research Abstract |
1.[Co(edda)(en)]^+および[Co(edda)(gly)]系の異性化 アルカリ性条件下でΛ(R)ーβー[Co(edda)(en)]^+は光学純度約45%のΛ(S,S)ーα体に異性化する。この結果はΛ(R)ーβ体からΛ(S,S)ーα体とΔ(R,R)ーα体が約72:28の比率で生成していることを示す。Λ(R)ーβ体からΛ(S,S)ーα体への異性化はCoーN(en)bondーrupture機構やturist機構では説明できない。下図のようなCoーO bondーrupture機構によってこの反応を説明した。Λ(R)ーβ体からΛ(S,S)ーα体への経路は、[Co(edma)_2]^+のような三座配位子を含む錯体の異性化に提案された機構と同じものである。 [Co(edda)(en)]に可能な3幾何異性体(αーmer(O),βーmer(O),βーfac(O)を単離・光学分割し,アルカリ性条件下での異性化反応を調べた。この結果は上述の反応機構にCoーO(gly)bondーrupture機構を加えることにより説明できた。Λ(R)ーβーfac(O)からΛ(R)ーβーmer(O)への高い光学純度を保った異性化は,キレ-ト配位したglyのNとOの配位座交換反応によって説明される。このような配位座交換は従来のキレ-ト錯体の異性化反応では考慮されておらず,過去のキレ-ト錯体の異性化反応をこの機構を使って検討する必要があるものと考えられる。 2.[Co(eddp)(en)]^+錯体 この錯体には2種(αとβ)の幾何異性体が考えられるが,3種の異性体が単離された。分光学的デ-タより,これらはα体と2種のβ体であることが明かになった。2種のβ体間の異性化が高い光学純度を保って進むことから,これらはeddpの配位不斉N原子の絶対配置の違いによる配座ジアステレオ異性体と推定した。
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[Publications] Hiroshi KAWAGUCHI: "Stereoselective Isomerization Reactions of the (EthylenediamineーN,N'ーdiacetato)(ethylenediamine)cobalt(III) and (EthylenediamineーN,N'ーdiacetato)ー(glycinato)cobalt(III) Complexes in a Basic Aqueous Solution" Bulletin of the Chemical Society of Japan. 63. 3535-3541 (1990)