1991 Fiscal Year Annual Research Report
亜社会性ハダニ類の繁殖システムの進化に関する血縁選択理論の実証的研究
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02640501
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齋藤 裕 北海道大学, 農学部, 助手 (20142698)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
刑部 正博 農林水産省, 果樹試験場. 安芸津支場, 研究員
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Keywords | 行動変異 / 血縁選択 / 性選択 / 交尾システム / 地理的変異 / 攻撃性 / ハダニ / 亜社会性 |
Research Abstract |
本年度は,平成2年度の西日本を中心とした採取調査と実験の成果を踏まえて,北海道内および九州において材料(ススキスゴモリハダニ)の追加採集を行い,さらに依頼等によって入手した多くの地域個体群における,同ハダニの雄の攻撃行動の実験的検討を継続した。同時に,気象庁のアメダスデ-タの検索を行い,全採集地の温度条件を検討した.また,この調査に当たって,ハダニの標本を形態測定用に良好に作成するために,新しい固定方法の開発を併せて実施した. その結果,以下のような事実が明らかとなった. 1.西日本を中心とした18地域の個体群を調査した結果,ススキスゴモリハダニの雄の攻撃行動には,個体群を採集した地域の冬の温度に相関した地理的変異が存在することが判明した. 2.ススキスゴモリハダニの雄の形態,特に第I脚に攻撃性の地理的変異に平行した長さの変異がみとめられた. 3.1の事実は,当該行動の進化が血縁選択によって生じたということを示す世界的にもきわめてめずらしい証拠であると結論された. 4.2の事実は,攻撃性が血縁選択によって変化した結果,雄の繁殖システムが変化し,それによって雄の武装形質が性淘汰されたことを示すと結論され,これも野外個体群にはじめて発見された性淘汰の証拠であると結論された. 5.副次的な成果として,これまで良好なスライド標本を作ることが困難であったダニ類の標本作成のために,きわめて簡便な固定方法の開発に成功した. 6.上記の研究の成果は,国際行動学会議において発表するとともに,平成2年度に論文として公表した分に加えて,現在3編の原著論文にまとめて投稿中である.
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Saito Yutaka: "Factors determining harem ownership in a subsocial spider mite(Acari,Tetranychidae)." Journal of Ethology. 8. 37-43 (1990)
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[Publications] Saito Yutaka: "'Harem'and'nonーharem'type mating systems in two species of subsocial mites (Acari,Tetranychidae)." Researches on Population Ecology. 32. 263-268 (1990)
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[Publications] 齋藤 裕: "ハダニの亜社会性ー協調と攻撃性の進化.「動物社会における協同と攻撃ーその意義と進化ー」(伊藤 嘉昭 編)" 東海大学出版会, (1992)
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[Publications] 齋藤 裕: "ハダニのオスの悩み・ハダニの糸と生活型 103ー119ペ-ジ分担執筆,「ダニのはなし II.生態から防除まで」(江原 昭三 編)" 技報堂, 223 (1990)