1990 Fiscal Year Annual Research Report
富士山の森林限界におけるイタドリの生理生態学的研究
Project/Area Number |
02640505
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
増沢 武弘 静岡大学, 理学部, 助教授 (40111801)
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Keywords | 富士山 / 森林限界 / ド-ナツ化現象 / イタドリ / 水ポテンシャル / 光合成 |
Research Abstract |
富士山南東斜面の森林限界付近に成立するイタドリ群落は、282年前の宝永の噴火以後に形成されたものである。パッチが大型になると中央部が枯死し、いわゆるデッドセンタ-を作る。本研究では、なぜデッドセンタ-が生じるのかをパッチ中央部と周辺部において1.水ポテンシャル・光合成、2.根系の呼吸速度、3.栄養塩類の吸収の3つの側面から明らかにしようとしたものである。 調査区は、50m×50mとして、その中に分布するイタドリパッチ内から、大、中、小の3パッチを選定し、それらの構造調査を行った。ド-ナツ化現象が生じている大型バッチにおいて、中央部と周辺部からシュ-トを採集し、水ポテンシャルと光合成の測定を行った。水ポテンシャルは、中央部と周辺部とではほとんど同様な変化をしていた。また、水条件の厳しい夏期の日変化においては、太陽光の変動に伴って水ポテンシャルも変化したが、これらの値もパッチの中央部と周辺部とではほとんど差異がなかった。したがって、パッチ内の水分状態は中央部と周辺部ではほとんど同様な条件であることが明らかとなった。 しかし、光合成と地下茎の呼吸には明瞭な差があった。夏期にパッチの周辺部と中央部のシュ-トにおいて、光合成能力のアクティビティ-の測定を行なった結果、周辺部のシュ-トは高いアクティビティ-を持っていた。また、地下茎の呼吸速度は、中央部において低い値が得られたが、これは中央部の地下茎の密度が高く、かつ令も高い古い地下茎が多いためであろうと予測された。中央部と周辺部における土壌中の栄養塩類については、中央部において高い値を示した。これにより、中央部の土壌が富栄養化されていることが証明された。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Masuzawa Takehiro: "Seasonal changes in the soil temperature over a treeーyear period at the timberline on Mt.Fuji." Rep.of Fac.of SCi.,Shizuoka Univ.Vol.25,41ー50(1991). 25. 41-50 (1991)