1991 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンザルの個体の社会的地位と採食戦略に関する観察及び実験的研究
Project/Area Number |
02640509
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉山 幸丸 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (20025349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大沢 秀行 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (60027498)
森 明雄 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (50027504)
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Keywords | ニホンザル / 採食様式 / 社会的順位 / 繁殖成功度 / 栄養摂取量 / 蛋白質摂取量 / 出産 |
Research Abstract |
本研究は、ニホンザルの採食行動が食物の分布状況、個体の性・年齢、個体間関係などによってどう変化するかを調べ、各個体の繁殖成功度にあたえる影響を分析することを目的としている。今年度は、とくに大分県高崎山に主力をおいて調査した。上位雌と下位雌では、人工餌場では圧倒的な採食量の差があったが、森の中では下位雌が採食時間をのばし、採食スピ-ドをあげ、採食レパ-トリ-を広げて、摂取エネルギ-(カロリ-)には大幅な差がないことを、すでに明らかにしている。ところが繁殖成功度を、さしあたり出産率で調べたところ、上位と下位では明かな差があることが分かった。そこで再度、摂取食物をカロリ-だけでなく蛋白質、脂肪、炭水化物に分けて調べ、さらに、蛋白については必須アミノ酸についても分析を進めた。現在まだ分析中であるが、上位雌は人工餌場で高カロリ-でかつ消化率の高い小麦を中心に大量のカロリ-を摂取しているが、下位雌は多様な食物をまんべんなく摂取しているため、必須アミノ酸については両者の摂取量に大差はなく、蛋白質全体を見ても大差がないことが示唆されている。両者の差は炭水化物に顕著に現れているようである。通常、蛋白質摂取量が出産や育児に大きく影響するように考えられるが、必要エネルギ-ぎりぎりで生存している野生動物では、母体の獲得するエネルギ-そのものが、その健康と妊娠・出産にも関係し、繁殖成功度の差をもたらしている可能性がある。 一方、新生児を抱えた出産雌は、しばらくの間順位を上昇させることが観察上示唆されている。そこで、食欲のでた母親が大胆になるのか、新生児を連れていると上位個体の攻撃性が低下するのか、についても調査を進めた。まだ調査は進行中であるが、どうやら前者らしいという結果が出つつある。
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[Publications] Sugiyama Yukimaru: "Behavioral studies of Sapanese monkey in artificial feeding and natural environment." Itoigawa N,Thompson RKR & Sugiyama Y eds,Topics in Primatology.(東京出版会). (1992)
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[Publications] Sugiyama Yukimaru: "Reproductive success and social status of Japanese monkeys." Shotake T et al.eds,The Macaques.(1993)