1990 Fiscal Year Annual Research Report
「からし油配糖体」生成植物群の系統に関する比較発生学的研究
Project/Area Number |
02640539
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
戸部 博 京都大学, 教養部, 助教授 (60089604)
|
Keywords | からし油配糖体 / グルコシノレ-ト / Bataceae / Batis / Koeberlinia / Capparales / Sapindales / embryology |
Research Abstract |
平成2年度に計画したBataceae,Koeberliniaの研究、Tovariaceae/Salvadoraceaeの種子についての補足研究のうち、最後のものは進行中,前二つは研究が終了し原稿を投稿する段階に入っているため、この二件について成果の報告を行う。 1.Bataceaeの比較発生学.Batis argillicolaとB.maritimaの全二種について、葯・胚珠・種子の発生過程に見られる形態的特徴が初めて明らかにされた。それによると、Bataceaeは他の科には見られない特徴の組み合わせを持ち、その特徴は次の通りである。(1)内外珠皮は二次的に厚くなるが、維管束を持たない。(2)胚のうはユニ-クな2胞子性4核型胚のう(“Batis type")。(3)胚のうのまわりの珠心組織は厚い。(4)種子は円柱状で種衣はなく、無胚乳である。(5)種皮は非常に薄く、外種皮の細胞壁のみから作られる。これらの特徴を元に比較すると、Bataceaeは近縁であると考えられてきたGyrostemonaceaeとは全く似ていないことが判明。幾つかの類似点を考慮して、BataceaeはむしろSapindalesの近くに単型のBatalesとして扱かった方が適切と判断された。 2.Koeberlinaの比較発生学.Koeberliniaについて、上と同様の観察を行ったところ、CapparaceaeやCapparalesの他の科と(1)二次的に厚くなる内珠皮、(2)2細胞層の外珠皮(3)種衣をもったそら豆型の有胚乳種子、(4)fibrous exotegmer,等を持つ点で良く一致することが分かった。しかし、Koeberliniaと最も近縁とされてきたCapparaceaeとだけ結び付ける根拠はない。むしろKoeberliniaはtenuinucellateの胚珠,大きく発達する珠心の頂端細胞群,“exotestal"seed coatを持つ点でCapparaceaeと大きく異っている。そのため、他の根拠とも合わせて、単型のKoeberliniaceaeを認めるのが適切と判断された。
|
-
[Publications] Tobe,H.and P.Raven: "The embryology and systematic position of Koeberlinia(Capparales)" Systematic Botany.
-
[Publications] Tobe,H.and P.Raven: "The embryology and relationships of Bataceae" The Botanical Journal of Linnean Society.