1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02640558
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
本川 達雄 琉球大学, 理学部, 助教授 (80092352)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松野 〓 島根大学, 理学部, 教授 (60032629)
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Keywords | キャッチ結合組織 / ヒトデ / 体壁 / 力学的性質 |
Research Abstract |
ヒトデ体壁にキャッチ結合組織が存在するかどうかを確かめるために、体壁の構造と、単離した体壁の力学試験とを行った。その結果、ヒトデ体壁の結合組織はキャッチ結合組織であることが、ほぼ確実になった。 1.材料としてアオヒトデLinckia laevigataの腕を用いた。この材料は分厚い結合組織層を持ち、結合組織層のみ単離する事が可能だからである。われわれが普通に見かけるヒトデでは、このようなことは不可能である。 2.組織切片像を見ると、体壁の最外部は、瓦状に重なりあった骨片が取り囲んであり、最内部(体腔側)は体腔上皮で、その間が分厚い結合組織層となっていた。結合組織層はアザンで青く染まる繊維がぎっちりと詰まっており、繊維間の隙間は非常に少なかった。繊維の多くは腕の長軸方向にそろって走っており、周方向に走る繊維は、それに比べて少なかった。体壁を貫いて皮鰓へむかう水管が、まま、見られた。 3.電子顕微鏡で観察すると、繊維はコラ-ゲン特有の縞模様を示していた。細胞成分としては、空胞細胞、神経分泌細胞が見られ、筋肉は、水管系の壁にのみ見られた。桑実細胞は見られなかった。 4.単離した体壁のクリ-プ試験を行った。体壁は一定の荷重の下で伸び続け、切れた。伸び速度はカルシウムイオン濃度によって変わり、カルシウムを増やせば伸びにくく、減らせば伸びやすくなった。 5.ほとんど筋細胞を含まぬ結合組織が空胞細胞や神経分泌細胞というカルシウム濃度を制御する細胞系を持っており、人為的にカルシウム濃度を変えてやると粘度が大きく変わる、という以上の結果は、今までナマコ体壁で調べられてきたキャッチ結合組織の特質と一致し、ヒトデ体壁にもキャッチ結合組織が存在する事が、ほぼ確定できる結果となった。これで、棘皮動物すべての綱にキャッチ結合組織の存在を示すことができたことになる。
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[Publications] Motokawa,T.: "Stiffness of starfish arm and involvement of catch connective tissue in the stiffness change" Comparative Biochemistry and Physiology.
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[Publications] Matsuno,A.: "Ultrastructural changes during connective tissue catch in the dermis of the sea cacumber stichopus chloronotus." Cell and Tissue Research.
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[Publications] Nishimaru,M.: "Effect of ionic environment on the catch connective tissue of the body wall of starfish" 投稿準備中.
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[Publications] 本川 達雄: "ナマコの皮はかたさを変える" 日本バイオレオロジ-学会誌. 4. 100-108 (1990)
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[Publications] 平本 幸男: "細胞のバイオメカニクス" オ-ム社, 213 (1990)