1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02640576
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
松岡 教理 弘前大学, 理学部, 助教授 (10125461)
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Keywords | 棘皮動物 / 系統進化 / グルコ-ス6リン酸脱水素酵素 / 酵素学的性質 / 分子系統樹 / 電気泳動 / アイソザイム変異 / タンパク多型 |
Research Abstract |
棘皮動物門は5つの綱から構成されている。即ち、ウニ、ヒトデ、ナマコ、クモヒトデ、ウミユリ類である。これらの中でウミユリ類が最も原始的な棘皮動物群であろうという点に関しては研究者間でほぼ見解が一致している。しかし、他の4綱間の系統類縁関係については諸説が提案されており、極めて不明な点が多い。申請者はこれら4綱の系統類縁関係を解明するため従来にない新たな分子的手法を試みた。まず、4群からペント-スリン酸回路のKey enzymeであるグルコ-ス6リン酸脱水素酵素(G6PD)を分離精製し、それらの酵素学的性質(触媒特性)を比較した。調査したパラメ-タは、酵素活性に及ぼすpHの影響(最適pH、pH11での活性、Ga16pに対する活性)、3つの基質と1つの補酵素に対するKm値、3つの化学物質(PCMB,DEA,MgCl_2)の影響の合計10のパラメ-タである。次にこれらの各々について4群間で酵素学的性質を詳しく比較し、互いに性質が類似している場合には、1.0、類似していない場合には0とし、その平均値を生化学的類似度とした。そして、UPGMA法により分子系統樹を作成した。その結果をまとめると(1)最も近縁関係にあるのはヒトデとナマコである。(2)次にこのグル-プに近縁なのは、クモヒトデである。(3)ウニは4群の中で最も遠い関係にある。(4)ヒトデとナマコは進化的に新しい棘皮動物群である。(5)一方、ウニは4綱の中では最も古い起源を持つ原始的な棘皮動物である。(6)分子系統樹から棘皮動物の進化の方向性を推定すると、堅い骨格(殻)を持つ防御を主体とするもの(ウニ)から、徐々に骨格を無くし、筋肉系を発達させたもの(ヒトデ、ナマコ)が進化してきたと推測された。 その他、深海産のフクロウニ集団のアイソザイム変異や、ヒトデ類の集団遺伝学的研究も併せて行い、今後、棘皮動物の分子系統学的研究を実施する上で貴重な基礎的知見を得ることができた。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Matsuoka,N.: "Glucoseー6ーphosphate dehydrogenases of echinoderms." Comparative Biochemistry and Physiology,Part B. 98B. 539-542 (1991)
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[Publications] Matsuoka,N.: "Genetic variation in the starfish,Coscinasterias acutispina." Comparative Biochemistry and Physiology,Part B. 98B. 893-898 (1991)
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[Publications] Matsuoka,N.: "Maintenance mechanism of enzyme polymorphism in echinoderms." Science Reports of Hirosaki University. 38. 38-45 (1991)
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[Publications] Matsuoka,N.: "Biochemical systematics of echinoderms." Biochemical Systematics and Ecology. (1992)
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[Publications] Matsuoka,N.: "Phylogenetic relationships of echinoderms deduced from kinetic similarity of glucoseー6ーphosphate dehydrogenase." Comparative Biochemistry and Physiology,Part B. (1992)