1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02640591
|
Research Institution | Faculty of Science, Hokkaido University |
Principal Investigator |
川村 信人 北海道大学, 理学部, 助手 (80186147)
|
Keywords | 付加体 / メランジ / 泥ダイアピル / 砂岩シル |
Research Abstract |
最終年度にあたる本年度は,これまでに行なった泥ダイアピル・砂シルの検討に加えて,『チャート岩体内部への泥質堆積物注入現象』と『緑色岩と泥質堆積物の薄層状混合現象』に着目し,その検討を行なった. 1.岩手県釜石市白浜地域(ジュラ紀付加体ー北部北上帯) : 尾崎白浜漁港付近には,やや破断した砂泥互層中に,厚さ10m程度の成層チャートスラブ-ブロックが多数包有されている地質体が分布している.このチャートスラブ中に,周囲の泥質岩が網状に注入したことを示す露頭が観察された.泥注入脈はチャート岩体中の幅約1mの狭いゾーンに網状に集中している.個々の脈幅は一般にmmオーダーで,成層チャートの層理面に沿ってフィルム状に注入し,一部では層理面を低角で切断し,チャートの“はぎとり"を伴っている.また一部には,注入脈の内部に流動変形したシルト質ラミナ構造が保存されている場合もある. これらの産状は,含水状態の泥質堆積物が,高い間隙水圧を持った状態でチャート岩体に水圧破砕を与えながら注入したことを示している.この現象は,陸源の海溝堆積体と海洋性起源のチャート岩体が混合するプロセスと密接に関連したものと考えられる. 2.旭川市オイチャヌンペ川地域(白亜紀付加体ー神居古潭帯): この地域には,緑色岩類・メランジ相,および高圧変成岩類・蛇紋岩類からなる美瑛コンプレックスが露出している.『オイチャヌンペ層』は,緑色岩を主体とする“slab-stack"ユニットで,その中に泥質岩・砂質岩の薄層を挟在する.両者の境界部では,緑色岩と泥質岩がcm-mmオーダー(時にはμオーダー)で薄層状〜流状に混合する特異な岩相(“墨流し岩相")が認められる. この墨流し岩相は,日本列島の他の地域・時代の付加体の中に普遍的に認められることが分かってきている.現在確認されているものを列挙すると,イドンナップ帯・渡島帯・秩父帯・四万十帯・青海一連華帯,などである.これらは,海洋性岩石スラブのduplexingに付随した含水堆積物の挙動に関連して形成されたと考えられる.
|