1992 Fiscal Year Annual Research Report
本邦新生代における寒冷系貝類化石群の成立過程とその変遷
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02640606
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Research Institution | The University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小笠原 憲四郎 筑波大学, 地球科学系, 教授 (20110653)
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Keywords | 新生代 / 貝類化石 / 寒冷系 / 生物地理 / 古海洋気候 / 竜ノ口動物群 / 親潮 / 寒冷化 |
Research Abstract |
本研究の目的は本邦新生代における浅海性貝類の変遷を総括し、寒冷系貝類の成立過程についての地史的・古環境的背景を多角的に考察し、親潮的寒冷貝類の具体的成立過程とその原因を明確に示す事にあった。そのために、寒冷系とはどのように定義する事ができるのか、更に本邦の非温暖性貝類の時間・空間的消長を明確にする必要があった。平成2-3年度は文献等によって現生北方系貝類種属の水温特性を把握しながら、より客観的な海洋気候を区分認識し、浅海性貝類と海洋気候の対応関係を明確にする事に努めた。また北海道を中心に浅海性貝類化石含有の第三系の地質年代を明確にしながら、貝類群集の変遷内容と古海洋気候的の関連を検討した。平成4年度は過去2年間で得られた結果を更に総合的に再検討し、寒冷系を判断する基準をつくり、その基準に基づいて新第三紀の貝類化石群集の古海洋気候復元と、寒冷系貝類の出現過程やその背景を明確にする事が出来た。 結果現在の海洋生物地理的立場から、浅海域における寒冷とは、現在の親潮を中心とする亜寒帯と高緯度地域の寒帯に分布する種属に基づいて判断すべきで、温帯には冷温帯・中間温帯・暖温帯の3帯を設定し、これらを寒冷系と呼ぶべきではない。ここで得られた寒冷系の貝類相を基準に北西太平洋地域の新第三系の貝類化石群の繁栄時の海洋気候を推定した結果、中新世には現在の親潮に相当する寒冷海は出現しておらず、更に寒冷系の代表と考えられてきた鮮新世竜ノ口動物群は冷温帯下で繁栄したものであると結論づけた。即ち寒冷海の出現は第四紀初頭になって北海道渡島半島の瀬棚層の貝類化石記録によって示される。この寒冷系貝類出現の背景は、世界的寒冷化にともなって日本海やオホーツク海などの北西太平洋地域の中緯度地域の閉鎖的沿海が、冷温帯から亜寒帯への貝類種属の適応放散に場を提供した事が要因である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Ogasawara,K: "Paleozoogeographic significance of Mizuhopecten slodkewitschi Sinelnikova from the Miocene Shibiutan Formation,northern Hokkaido" Sci.Rep,lnst.Geosci,Univ Tsukuba,Sec.B.14. (1993)
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[Publications] Ogasawara,K: "Tropical molluscan association in the Middle Miocene marginal sea of the Japanese Islands:An example of molluscs from the Oyama Formation,Tsuruoka City,Northeast Honshu,Japan" Trans.Proc.Palaeont.Soc.Japan,N.S.no.167. 1224-1246 (1992)
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[Publications] Ogasawara,K: "Neogene of the Yatsuo area,Toyama Prefecture" 第5回環太平洋新第三系層序に関する国際会議及び1GCP-246国際討論会,巡検ガイドブック. 1-25 (1991)
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[Publications] 大上 和良: "脊梁山地東縁部に分布する飯岡層の地質年代と堆積環境" 中川久夫教授退官記念論文集. 223-234 (1991)
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[Publications] Ogasawara,K: "Neogene marine sequences and benthic foraminifers" 第4回底生有孔虫国際シンポジウム 地質巡検Cガイドブック. 1-17 (1990)
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[Publications] Ogasawara,K: "A new Miocene gastropod species co-occurred with Paleoparadoxia specimens from the Yanagawa Formation,Fukushima Prefecture,Northeast Honshu,Japan" Saito Ho-on Kai Mus.Nat.Hist,Res.Bull. no.58. 25-30 (1990)