1990 Fiscal Year Annual Research Report
ヒシガイ属二枚貝における光合成藻との共生に関する適応戦略の研究
Project/Area Number |
02640609
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大野 照文 京都大学, 理学部, 助教授 (40194245)
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Keywords | オオヒシガイ属 / 共生関係 / 渦鞭毛藻 / Fragum unedo / Fragum fragum / Fragum loochooanum / carina |
Research Abstract |
渦鞭毛藻と共生するオオヒシガイ属のFragum unedo,Fragum fragum、Fragum loochooanumについて、解剖学的特徴、軟体部における共生渦鞭毛藻の分布、殻の透明度、生態について調査し、次の点を明らかにした。 1.3種の二枚貝は、内生の生態を示す。共生する渦鞭毛藻への光の供給様式は少しづつ異なる。すなわち、大型で不透明な殻を持つF.unedoは、肥大した外套膜に共生藻をもち、開殻時には外套膜を殻の外に伸張して光をあてる。肥大した外套膜を納めるために、F.unedoには弱いcarina状の構造が見られる。中型で半透明な殻を持つF.fragumは、透明な入水管、出水管、さらに半透明な殻を通じて、殻の内側のえらや外套膜中の共生藻に光を当てる。小型のF.loochooanumは、透明な入水管、出水管を通じて、えらと殻の内側の外套膜中の共生藻に光を当てる。 2.上記3種の内生の二枚貝と共生する渦鞭毛藻は、わずかな光でも光合成を行う能力がなければならない。この推定を実証するために、京大理学部植物学教室の加藤哲也氏の協力でF.fragumの外套膜から共生藻を抽出・培養し、光合成活性を測定した。その結果、渦鞭毛藻は、真夏の日中の1/20程度の弱い光量でも光合成を行うことが明かとなった。 4.化石二枚貝を概査した結果、F.unedoの殻形態との類似から、トリゴニア科のよく発達した中空のcarinaは、肥大した外套膜を納めることができることが明らかになった。また肥大した外套膜は、共生藻を含んでおり、開殻時に伸張して共生藻に光を当てていたとの仮説を立てた。 今後、化石トリゴニアの産状、形態の精査を行い、この「トリゴニア・渦鞭毛藻共生仮説」の検証を行いたい。
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