1991 Fiscal Year Annual Research Report
後期白亜紀の海洋無酸素事変の古生物学的・地球化学的研究
Project/Area Number |
02640614
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
平野 弘道 早稲田大学, 教育学部, 教授 (00037293)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅井 明人 早稲田大学, 教育学部, 助手 (10222556)
安藤 寿男 早稲田大学, 教育学部, 非常勤講師 (50176020)
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Keywords | 白亜紀 / セノマニアン・チュ-ロニアン境界 / 海洋無酸素事変 / 北海道 / 大夕張 / 蝦夷累層群 |
Research Abstract |
北海道夕張市大夕張地方に分布する蝦夷累層群について、北から日蔭沢林道、滝の沢林道、白金沢の3セクションについて大型化石による化石層序学的研究及び硫化物硫黄含有量による化学層序学的研究を実施した。その結果大型化石については、Basal Turonianの国際的示準化石であるPseudaspidoceras flexuosumを得る事ができ従来の示準化石であるTragodesmoceroides subcostatusおよびInoceramus aff.saxonicusと共にCenomanian/Turonian境界を明確にする事ができた。そして硫黄含有量がこの化石層序上のC/T境界の直下で明確なピ-クを示す事が判明した。これにより、北西太平洋に於いてもセノマニアン・チュ-ロニアン境界海洋無酸素事変が生じたという高い可能性を示す事ができた。この成果は1991年5月にフランスのグルノ-ブルで開催された国際シンポジウムで発表し、国際的討論を経た。 また、同年5月に北アフリカのチュニジア及び南フランスのC/T境界を訪問し、岩石試料を採集、化学分析し、上記大夕張の場合と同じように化石層序学上のC/T境界直下に硫化物硫黄の含有量のピ-クがある事を確認した。これにより、大夕張地方で認められた硫黄のピ-クが海洋無酸素事変と対応するものである可能性が一段と高められた。この成果は、1991年8月に福岡で開催された白亜紀の海盆に関する国際シンポジウムで発表し、国際的観点からの討論を経た。 さらに以上の成果はDesmoceras japonicumからTragodesmoceroids subcostatus,T.matsumotoiへの進化系統の説明に有効な役割を果たした。すなわち、セノマニアンのD.japonicumは酸素欠乏水の侵入により生息水塊を奪われ、多くは絶滅したが、一部の小個体群のみが浅海に逃避する事に成功し、そこで種分化を生じT.subcostatusとなったという事である。この成果は、1991年9月にロンドンで開催された海洋事変とアンモナイトの進化国際シンポジウムで発表し、国際的討論を経た。
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