1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02640642
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Research Institution | National Museum of Nature and Science,Tokyo |
Principal Investigator |
柏谷 博之 国立科学博物館, 植物研究部・文部技官主任研究官 (10000142)
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Keywords | カラタチゴケ / 地衣類 / 地衣成分 / デプサイド / デプシドン / chemosyndrome / 化学変異 / 地理的分布 |
Research Abstract |
カラタチゴケ属地衣類のうち、地衣体の充実するMyelopoea亜属について、化学的変異群の特定及び地衣体の形態と地衣成分の相互関係の検討を実施した。皮層に含まれるウスニン酸は全ての種類から検出されたが、髄層に含まれるデプサイド、デプシドン、脂肪酸に関しては検討した72種の大多数にchemosyndromeと呼ばれる現象が観察された。特に、Ramalina complanata、R.conduplicns、R.farinacea、R.usneaには5種類以上の化学的変異が存在し,中でもR.usneaには13種類もの化学的変異株が存在することが明らかになった。また、カラタチゴケ属に出現する化学成分のうち、セッカ酸、ジバリカ-ト酸等のデプサイドやデプシドンドのサラチン酸は種を特徴つける形質との関連は少なく、逆にオプツザ-ト酸(デプサイド),ノルスチクチン酸(デプシドン)、脂肪酸の存否と形態や地理的分布との強い関連があることがわかった。一方、髄層に地衣成分を含まない種類も15種類確認された。地衣成分を含まない種類には、もともとその合成能力のない種類と一旦獲得した合成能力を進化の過程で失ったと推定される種類が含まれている。 さらに、これまでの研究結果から全く分類形質として考慮されていなかった子器や地衣体の内部構造の特徴が本属の分類や系統を考える上で非常に重要であることが明らかになった。特に地衣体の皮属下部に発達する軟骨状組織には、解剖学的に数種類に分類されることが確認された。この特徴は近緑のサルオガセ属との系統関係を類推する上で重要な形質と考えられる。
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