1991 Fiscal Year Annual Research Report
パルス磁場誘導法による酸化物超伝導体の臨界電流密度測定
Project/Area Number |
02650034
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
滝沢 武男 日本大学, 文理学部, 教授 (10059909)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 重孝 日本大学, 文理学部, 助手 (90218355)
|
Keywords | 酸化物高温超伝導体 / YBCO / パルス磁場誘導法 / 臨界電流 / 磁束ジャンプ / 磁束の運動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、超伝導体の応用における最も重要な量の一つである輸送臨界電流密度Jcを、電流導入端子の不要なパルス磁場誘導法により、印加磁場および温度の関数として求めることである。 申請者らは平成2年度において装置の改良を行ない、平成3年度には新装置により酸化物超伝導体のJc測定を開始した。新装置の特長は、これまで立ち上がり点において一定しなかった磁場パルスの形状をLCR放電回路の臨界放電に近づけ、最高磁場に達するまでの時間を一定化し、かつその形状を容易に計算出来るようにした点にある。新日本製鉄先端研究所で作製されたQMG試料をリング状に加工し、試料中心に設けた自由空間部への磁束をサ-チコイルにより観測した。この結果、磁束の遮蔽と磁束の侵入が極めて明瞭され、磁束侵入の開始点における磁場の値から輸送電流密度の正確な評価が可能になった。さらに、リング状試料の厚さを薄くするに連れて、磁束流の速度が増し、ついには磁束ジャンプが観測された。磁束流の速度を温度の関数として測定し、速度が温度に対し指数関数的に増大することを見いだした。次に、複数のサ-チコイルを試料表面に設置し、試料への磁束の侵入と中心部への磁束流入の同時観測を試みた。これにより、磁束ジャンプを再現性よく観測すると同特に、ジャンプが試料のある部分で生じており、従来の安定化理論で説明できることが分かった。磁束ジャンプは、超伝導機器の磁気安定性の原因であり、超伝導の応用上で重要な現象であるが、磁束の運動と関連させて再現性良く観測されたのは、画期的な事と思われる。 今後は、この種の実験を直流磁場の下で行ない、酸化物超伝導体のJc、磁束の運動ならびに磁束のジャンプを温度と磁場の関数として測定し、Jcの測定法を確立すると共に磁束の動力学を研究する予定である。
|