1990 Fiscal Year Annual Research Report
ル・コルビュジエの制作と建築的世界像の形式に関する研究
Project/Area Number |
02650437
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 邦男 京都大学, 工学部, 教授 (20025927)
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Keywords | ル・コルビュジエ / ヴィジョン / ピュリズム / 制作 / 世界 / サビナ / 表象 / 建築術 |
Research Abstract |
ル・コルビュジエの絵画、彫刻、建築の制作に関して、本年度は、以下の研究調査を行った。 1.ピュ-リズム絵画と「白の建築」の時代と呼ばれる1920年代を総括する建築作品「Villa Savoye」(1930)の保存再生問題とル・コルビュジエ自身の係わりを示す晩年の書簡を入手し、その内容を整理した。これによって、制作態度と作品そのものに対する態度が建築家自らの手記によって明かとなった。 2.絵画、彫刻の制作と建築作品の制作との関係について、予備的考察を行った。これによって、ル・コルビュジエの制作は、絵画、彫刻、建築という異なる3分野に跨った創造活動と理解されるべきではなく、それぞれが方法的であり、それは、表象的ヴィジョンと「術 tekhne」的手法との相関として統一的に理解されるべきことが明らかにされた。また、ピュリズム運動に代表される前期、「詩的反応のオブジェ」の中期・絵画・彫刻、建築が具体的に実践される後期、この3つの時期の諸特徴を考察した。 3.1945年以降に展開されるル・コルビュジエの彫刻制作の実態を知るには、共同制作者J・サビナとの往復書簡が重要である。現在パリのル・コルビュジエ財団に保管されているル・コルビュジエ=サビナ書簡のコピ-を入手し、現在その整理作業を行っている。この資料分析から、彫刻制作のみならず絵画、彫刻と建築の制作の関連解明にも手がかりを得ることを期待している。 以上の部分的な考察を通して、絵画・設計図、彫刻・模型、建築作品・環境の相互的な関連と、そこに主題化されるいくつかの問題、例えば、表象と真実、想像と現実、空間と世界などの問題が建築制作に即して論じられることになろう。
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