1990 Fiscal Year Annual Research Report
強誘電セラミック結晶におけるクラック伝播過程の光弾性その場観察
Project/Area Number |
02650463
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東田 賢二 京都大学, 工学部, 助手 (70156561)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成田 舒孝 京都大学, 工学部, 助教授 (10026213)
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Keywords | 強誘電セラミック / クラック / 光弾性 / 破壊靭性 |
Research Abstract |
強誘電セラミックSrTiO_3単結晶を用い,その破壊靭性値の温度依存性を測定するとともに,載荷状態でのクラック先端での応力状態及び組織変化を鋭敏色板を用いた光弾性法での場観察した.また,これと比較するため,NaClー20%NaBr混晶結晶ならびにZrO_2ー10mol%Y_2O_3(立方晶)単結晶についても,同様の試験・観察を行った. SrTiO_3を室温から冷却していくと,105K付近において立方晶から正方晶への変態が起こる.この相変態は,誘電率変化に伴う光弾性像の色の変化として,本研究で用いた結晶においても明確に観察された.まず,SrTiO_3単結晶の破壊靭性値を室温と液体窒素温度との間の種々の温度で測定した結果,室温での1.5MPa√<m>という値から温度低下とともに靭性値は増加し,125K付近では約5MPa√<m>の値にまで達した.しかし,変態点以下となった77Kでの靭性値は,1.6MPa√<m>と大きく低下した.これに対して,NaClーNaBr混晶ならびに立方晶ジルコニアでは温度低下に伴う相変化は現れず,この場合,靭性値についても,立方晶ジルコニアについて低温に行くに従い若干の上昇が見られた以外,大きな変化はなかった.次に,破断後の試片を光弾性観察した結果,SrTiO_3についてはクラック先端近傍に内部歪に対応した明確な光弾性像が,かなり広い範囲わたって残留していた.一方,NaClーNaBr混晶ならびに立方晶ジルコニアでは,そのような残留応力の痕跡はなく,すべり変形など塑性変形の起こった跡も全く存在しなかった.SrTiO_3結晶において,破壊靭性試験途中での光弾性その場観察を行った結果,外荷重の増加に伴いクラック先端45゚方向に沿う線状の組織が新たに形成されるのが観察された.以上の結果は,SrTiO_3においては,105Kの変態点以上の温度で立方晶→正方晶変態が応力誘起され,これによって発生した内部応力場によってクラック先端での引張応力集中が抑制されることを示している.
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