1990 Fiscal Year Annual Research Report
オ-ステナイト系ステンレス鋼多層溶接部のミクロ割れにおよぼす結晶粒界の影響
Project/Area Number |
02650528
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐伯 義隆 名古屋工業大学, 工学部, 助教授 (00110255)
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Keywords | ミクロ割れ / ステンレス鋼 / 多層溶接部 / 成分偏析 / 結晶粒界 / 対応格子 |
Research Abstract |
ステンレス鋼,インバ-,インコネルなど,オ-ステナイト系の金属を多層溶接すると,次層の入熱によって前層溶融凝固部に小さな割れ(ミクロ割れという)を生じることがある。本研究ではステンレス鋼多層溶接部を用いて,溶接条件,粒界の方位差,粒界構造などの面から,ミクロ割れの発生を機構を検討した。 得られた主な結果は次の通りである。 1.前層および次層の,特に次層の溶接速度が小さいとミクロ割れが生じやすい。また,組織が完全オ-ステナイト相の溶接部のほうが,フェライト相を含む組織の溶接部に比べてミクロ割れを生じやすい。 2.ミクロ割れは液化割れと延性低下割れの2つの要因によって生じている。 3.ミクロ割れは方位差の大きな粒界に生じやすい。 以上の結果は,低融点化合物を形成する不純物元素の粒界への偏析がミクロ割れの原因であることを示唆していると考えられる。しかしながら、割れを生じた粒界からこのような特別の偏析を観察することはできなかった。したがって,今後より精密な成分分析を行い,子細に検討する必要がある。さらに冷却後ではなく,溶接中の粒界での成分偏析について検討する必要もある。 また,ミクロ割れが対応格子理論を用いて,ミクロ割れを生じた粒界と生じなかった粒界とを比較したが,両者の間に違いを見出すことはできなかった。この点については粒界移動なども含めて,さらに検討する必要がある。
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