1990 Fiscal Year Annual Research Report
固体表面欠陥構造のキャラクタリゼ-ションの関する研究
Project/Area Number |
02650537
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
尾張 真則 東京大学, 生産技術研究所, 講師 (70160950)
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Keywords | フッ化カルシウム / 電子線照射 / 固体表面欠陥 / X線光電子分光法 / X線光電子回析法 / 化学状態識別XPED / 表層構造解析 / エピタキシャル成長 |
Research Abstract |
熱的に極めて安定で,電気的に高い絶縁性をもつ化合物であるフッ化カリシウムに超高真空中で電子線を照射するとフッ素が脱離し表面に多数の欠陥が生成することはよく知られている。本研究において水分圧比の高い真空中でCaF_2(III)面に電子衝撃を伴った加熱の処理を施すと表層に下地とエピタキシャルな関係を有するCaO相の生成することが化学状態識別X線光電子回折法を用い見い出された。X線光電子回折法(XPED)は表層の規則的な構造における原子配列の解析に有効な手法であるが,本研究において光電子ピ-クの化学シフトと組み合わせることにより化学状態を識別し特定の化学状態にある原子種に関する構造情報を得る分析手法である化学状態識別X線光電子回折法(化学状態識別XPED)と立案し実現した。この方法は電子衝撃加熱により生成したCaO相を得られる光電子スペクトルより見極め,更にその相に関する構造情報を得るべく案出された分析方法であるため本研究によく適合した分析法であることは言うまでもなく,例えばスピネル型構造をもつ結晶のような複数の化学状態が存在する上非常に複雑な構造をもつ結晶に対しても、各化学状態種に関して構造情報を得ることが原理的に可能であるため極めて有効な表層構造解析法であると言える。更に本研究ではCaF_2(III)面上CaO相生成に関する電子と熱のそれぞれによる作用,効果について定性的,定量的知見を得ることを目的として試料を加熱することなく電子線照射した。化学状態識別XPEDにより構造解析した結果,試料温度が室温にあってもエピタキシャルなCaO相の生成することがわかった。また,電子線照射した試料を40℃に1時秀保持レアニ-リングしたところXPEDパタ-ンのピ-ク強度が約50%増加し半値幅が約18%減少した結果を得たことから熱はCaO相を生長させ,かつ結晶性を向上させる作用をもつということが示唆された。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] C.Akita,T.Tomioka,M.Owari,A.Mizuike,Y.Nihei: "A ChemicalーStateーDiscriminated XPED Study on Structure of Thin CaO Layer Formed by Electron Bombardment Heating on CaF_2(III)" Japanese Journal of Applied Physics. 29. 2106-2110 (1990)