Research Abstract |
1)パン酵母菌を破砕したホモジネ-トを用いる不斉還元 基質としてδーケト酸RーC(=0)CH_2CH_2CO_2H,R=C_2H_5,nーC_3H_7,nーC_8H_<17>,nーC_<11>H_<23>を用いた結果,対応するδーヒドロキシ酸をそれぞれ1.6,37,41,52%の収率で得て,後の2者については>98%eeでR配置であることを確認した。これをホ-ルセルを用いて還元した結果と比較すると,収率が大幅に増加したものがないことから,細胞壁あるいは膜の透過性は収率にほとんど影響していないことが推定される。また,この還元において補酵素としてNADPHを用いていることから,この還元酵素がNADPH依存性であることが確認された。光学純度,立体配置ともにホ-ルセルの場合と同じであったことは,目的とする酵素がホモジネ-ト中に遊離していることを示すものである。 2)添加物の不斉還元にたいする効果 酵素活性を測定した際に,MnCl_2が活性を増加させることが認められたので,ホ-ルセルによる還元にたいしてのMnCl_2の効果を調べた。基質として,RC(C=0)CH_2CH_2CH_2CO_2H,R=n-C_3H_7,nーC_4H_9,nーC_5H_<11>,n-C_6H_<13>,nーC_8H_<17>を用いて,Mncl_2濃度(培養液中)0,0.5,1.0,1.5Mとして還元したところ,R=n-C_5H_<11>については,収率が66〜69,76〜81,83〜94,65〜67%と変化し,MnCl_2 1.0Mのとき極大値を示した。他のアルキル基Rについてはいずれも無添加のときが最大値であった。光学純度,立体配置に変化はなかった。 大野ら(京大化研)はβーケトエステルの酵母還元でMgCl_2の添加によって,光学純度と収率の向上を報告しているが,MnCl_2の効果についてはこれまでに例がない。
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