1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02650633
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
大勝 靖一 工学院大学, 工学部, 教授 (20011009)
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Keywords | チトクロームP-450 / エチオポルフィリン錯体 / ペプチド鎖 / 不斉エポキシ化 / 極性溶媒 / 水素結合 |
Research Abstract |
一原子酵素添加酵素チトクロームP-450はヘム蛋白質の1つであり、この蛋白部分がその酵素活性、例えば反応速度、反応特異性に大きな影響を与えている。しかし現在蛋白部分を模倣した酵素モデルは提案されていない。本研究では蛋白部分を含む新しいポルフィリン錯体を合成し、チトクロームP-450のモデル反応としてのスチレンの不斉エポキシ化反応に適用してきた。本年は昨年からの延長として4本ペプチド鎖型のモデル錯体を合成し、そのペプチド鎖のモデル反応に及ぼす効果を検討した。 モデル錯体はペプチド鎖を4つのメソ位に有するFeエチオポルフィリンであり、常法によるスチレンのエポキシ化反応に適用した。反応媒体としては塩化メチレンを使用したが、ペプチド鎖の効果を見るために少量のメタノールを添加しても反応を行った。酸素化剤としてはヨードソベンゼンを使用し、不斉収率の測定はNMR法によった。 4本ペプチド鎖型錯体モデルは特定の空間配座を持たないにもかかわらず、不斉エポキシ化の触媒となった。ペプチド鎖長はアミノ酸(γ-BLG)の数nが2.0から4.4になった時化学収率の低下なしに不斉収率e.e.を16.9から53.8へと飛躍的に増加させた。これは単に立体的規制が高い不斉誘導をもたらしたのではなく、基質を取りこんだ時にペプチド鎖の空間配座が変化し、基質を最も好ましい空間配座につかせたことを示唆する。n=6.2にペプチド鎖を延ばすと化学収率・不斉収率双方が急激に低下した。これはペプチド鎖が活性中心を覆ってしまったためであると考えられる。次いで反応系に極性溶媒メタノールを添加してそのペプチド鎖に及ぼす影響を調べた。少量のメタノールの添加では、ペプチド鎖内の水素結合を切ってその自由度を増すためか、化学収率を増加させるものの、不斉収率を劇的に低下させた。このことはペプチド鎖内の水素結合が不斉誘導に大きな影響を及ぼしていることを意味する。
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