1990 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜形成分子の ^2HーNMRによる動的構造解析
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02650642
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
笹沼 裕二 東京工業大学, 工学部, 助手 (30205877)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安部 明廣 東京工業大学, 工学部, 教授 (50114848)
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Keywords | 両親媒性凝集体 / 生体膜 / リオトロピック液晶 / 脂肪酸 / nーアルカン / サ-モトロピック液晶 / 重水素NMR / コンホメ-ション解析 |
Research Abstract |
(1)凝集体中の脂肪酸分子の立体配座解析 生体膜と同様の両親媒性凝集体を形成する一価の脂肪酸金属塩を対象とし,重水素NMRデ-タによる立体配座解析法の確立を試みた。この種の化合物を選んだ理由は,一つの分子に付き一本のアルキル鎖を有し,生体膜形成分子の簡易化されたモデルとして適当であることによる。この解析には,まず分子運動の基準となる配向秩序パラメ-タの主軸系,すなわち分子軸系を設定する必要がある。そこで,現在までに報告されているnーC_<11>D_<23>COOKーH_2O系のラメラ相,nーC_7D_<15>COON_aーH_2O系のヘキサゴナル相から観測された実験デ-タに対し,極性基の構造(脂肪酸と水との相互作用),分子運動間の相関性を考慮して考案された幾つかのモデルを用い解析を行った。その結果,極性基の二つの酸素が非等価に界面に拘束され,立体配座の変化が分子軸の再配向に比べ著しく速いことを前提としたモデルのみが実験値を再現した。凝集体中では自由な状態に比べトランス分率が大きく得られ,アルキル鎖が相当伸びた形態にあることが示された。さらに,主鎖型液晶のスペ-サ-部に見られるトランス分率の偶奇振動も確認された。 (2)液晶中のアルキル鎖の立体配座解析 両親媒性凝集体とは異なり,一軸性の配向場であるネマチック液晶に溶解させたnーC_nD_<2n+2>(n=5,6,7,8,10,16)から観測された重水素NMRデ-タの解析を試みた。この系では,分子軸としてコンホマ-ごとに決定される最も小さな慣性モ-メントを与える主軸を採用した。解析の結果,いずれの化合物についても,実験値は良く再現され,この系でも液晶場では自由な状態に比べ著しくトランス状態が安定であることが明らかになったまた,分子鎖長の増加に伴い中心部の結合が強くトランス配座に拘束されることと,中心部から末端に向けて単調にトランス分率が低下する傾向が見られた。
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