1990 Fiscal Year Annual Research Report
植物細胞・組織の透化(vitrification)による超低温保存に関する研究
Project/Area Number |
02660003
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
管原 康剛 埼玉大学, 理学部, 助教授 (70114212)
|
Keywords | 超低温保存 / 凍結保存 / 透化(ガラス化) / 凍害防御剤 |
Research Abstract |
本研究では、植物細胞・組織の透化による超低温保存の可能性を明らかにするために、まず、種々の細胞・組織を用いて,その透化による液体窒素(ー196℃)中での保存を試みた。また同時に、従来利用されてきた二段階凍結法とこの透化による方法との比較を行った。 実験材料として、種々のプロトプラスト、カルス、懸濁培養細胞、茎頂を用いた。透化による方法では、試料を急速(>10^3℃/分)で冷却する必要があり、このためには熱拡散のよい容器が必要とされるが、本研究では熱によるシ-ルが可能なポリエチレンテレフタレ-トの小袋を新たに使用し、良好な結果を得た。透化の際の凍害防御剤として、エチレングリコ-ル(EG)、DMSOなどを用いた。これらは10〜15%の単独の溶液として用いたが、細胞によっては二種の組合せで用いた方が良い場合があった。また、エンドウ茎頂ではDMSOがより効果的であった。透化のための溶液(透化溶液=VS)として、EG、DMSOやPEGなどの多種の物質の混合液を用いた。このVSの細胞・組織への添加方法として、低温(0℃)で添加し、約5分後に急速冷却した方が好結果が得られた。本研究で用いた方法によって、種々の細胞・組織あるいは茎頂の透化による超低温保存が可能であることが確かめられた。しかし、この方法では,保存がきわめて困難あるものも何種かあった。また、現在のところ、二段階凍結法に比べ、透化による方法では、生存率は一般に低く,さらに方法を改良する余地が残された。保存後の生存率を高める方法として、糖添加培地あるいは低温培養(0〜5℃)の方法を検討した。その結果、いずれの方法によっても、透化による保存後の生存率を高められることが明らかになった。
|
-
[Publications] 塚田 美樹・菅原 康剛: "植物細胞・組織の超低温保存" 凍結及び乾燥研究会会誌. 37. (1991)
-
[Publications] 菅原 康剛: "透化(vitrification)による植物細胞・組織の超低温保存" 植物組織培養. 8. (1991)
-
[Publications] 駒嶺 穆ら編集: "植物バイオテクノロジ-事典(分担執筆)" 朝倉書店, 392 (1990)
-
[Publications] 遠藤 勲ら編集: "生物化学工学講座(分担執筆)" 化学工業社, (1991)