1990 Fiscal Year Annual Research Report
登熟阻害要因としての稲体内のアンモニアの動態と根の生理的活性の関係
Project/Area Number |
02660014
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
山口 武視 鳥取大学, 農学部, 助手 (30182447)
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Keywords | 水稲 / 粒重肥大 / アンモニア濃度 / 溢液 / 根の呼吸 |
Research Abstract |
本研究の目的は,(1)水稲玄米中のアンモニア濃度と粒重増加との関係を調査し,アンモニアがでんぷん合成を阻害しているかどうかを明らかにする。(2)次に溢液中のアンモニアと根の呼吸速度との関係を調査し、これらより,根の活性が登熟に及ぼす影響を明らかにすることである。 当年度は,主に目的(1)に関する実験について行なった。ハバタキとオオチカラの2品種を供試し,出穂期に多追肥,50%遮光,止葉以外剪葉および過繁茂処理を行ない、経時的に粒重増加を調査した。また,茎基部を切断し,切り口からの溢液を採取した後,その株の呼吸速度を測定した。玄米ならびに溢液中のアンモニア濃度は、インドフェノ-ル法で比色定量した。 1.剪葉,遮光処理を施すと,穂揃後12〜16日の粗玄米千粒重は無処理のものに比べて1次枝梗着生籾で10〜14%,2次枝梗着生籾で16〜24%抑制された。これら抑制された玄米中のアンモニア濃度(μmd/g・DW)は,無処理のものより高濃度であり、両者は負の相関関係が成立した。同時に別の実験でこの関係は,剛場条件下で生育させた水稲の玄米についても成り立つことが確かめられた。この玄米中のアンモニア濃度は登熟が進むにつれて低下していき,穂揃後30日以降は粗玄米千粒重との負の相関関係は見られなくなった。このことより,登熟後期の粒重肥大はアンモニアによる抑制よりも他の要因に支配されていることが指摘できる。 2.溢液中のアンモニア濃度は,多追肥処理のものが他の処理より高濃度であり,他の処理による影響は明らかでなかった。このことは,地上部の環境より、培地の影響を強く受けることを示すものであろう。また,根の呼吸速度と溢液中のアンモニア濃度との間には、本年度は明確な関係は得られなかった。次年度、再度検討する予定である。
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