Research Abstract |
2化性4眠蚕であるT_2(Lm^e,+^V,+^M)とCre(+^<Lm>,+^V,+^M)との正逆交雑種を供試し,胚子期と稚蚕期の温度および光条件を制御して眠性変化のプロセスを精査・検討した。また,これら正逆雑種の2〜4令幼虫にホルモン剤を投与し,眠性変化と就眠時期との関係も併せて調査・検討した。 その結果,眠数の増減は直接的には幼虫の内分泌のパタ-ン変更によっておこるが,眠数の減少(3眠化)は,4眠蚕群の成長が早まるような環境下で,就眠がおくれる個体となっておこり,眠数が増加(5眠化)する場合は,反対に4眠蚕群の成長がおくれるような環境下で,早く就眠した一部の個体においておこることがわかった。また,メトプレンやイミダゾ-ル化合物を投与した場合は,これらの投与物質が,幼虫のエクジステロイドの分泌時期に影響をもたらすために,就眠時期がずれて,眠数の増減がおこることがわかった。しかし,エクジステロイドの投与は,直接的に脱皮をひきおこすので,適応としての眠性変化を解析するためには,有効な手段とはなり得なかった。 これらの結果から,カイコの眠性変化は,当代のみならず後代にも意味をもつ環境に対する適応であり,不良環境に対する消極的な適応と優良環境に対する積極的な適応との両面があると考えられる。すなわち,4眠蚕の3眠化や5眠化には,壮蚕期になってから急激に眠性変化をおこす場合と,稚蚕期から徐々に就眠期がずれて眠性変化をおこす場合があり,前者の次代卵は休眠の方向へ,後者の次代卵は非休眠の方向へ休眠性も変わる傾向がある。このことは,カイコの眠性変化が個体レベルの適応であると同時に,種属保存・繁栄のための適応であることを示している。
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