1990 Fiscal Year Annual Research Report
土壌中での農薬分解の際の農薬分解微生物と非分解微生物との相互関係の解明
Project/Area Number |
02660060
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 匡 東北大学遺伝生態研究センター, 助教授 (80006006)
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Keywords | 環境汚染 / ペンタクロロフェノ-ル(PCP) / 農薬分解 / 土壌微生物相 / PCP分解 / PCP分解菌数 |
Research Abstract |
目的)農薬は近年農耕地以外の野外の場面でも広く使われ、それぞれの場の維持管理に貢献している。しかし、そのために農耕地の環境汚染といった農業の場面にかぎらず一般住民の住環境に対する影響如何といった新たな関心がもたれて来ている。そこで、農薬の大部分が到達する土壌中での農薬の微生物分解がますます重要になっている。農薬分解に関するこれ迄の研究によれば、農薬分解微生物の多くは農薬のみを分解する特殊なものではなく、農薬以外の通常の物質も分解利用することが知られている。したがって、共存する栄養条件やそれをとりまく微生物相全般が農薬分解を規定する大きな微生物的要因となろう。これらの問題に迫る第一段階として本年度は、農薬としてペンタクロロフェノ-ル(PCP)を選び、二、三の異なる栄養条件のもとでPCPの分解を検討した。方法)基礎培地として塩類混液を用い、それに4%になるよう土壌を加え、土壌中のすべての微生物細胞PCPや栄養物に接触するよう土壌懸濁液振とう系を設定した。異なる濃度のPCP,Nutrient Broth,グルコ-スなどを組み合わせて投与し,PCP分解菌数,全細菌数,グラム陰性細菌数などの推移,PCPの減少,CO_2放出などを追跡した。結果)PCP分解には最適濃度のようなものが存在し、検討した50ppmー2,5ppmの範囲では5ー10ppmでもっとも早く分解が開始した。またその分解は、Nutrient Brothのような複雑な栄養物が存在すると遅退する傾向があった。これらPCP分解に対応した型でPCP分解菌が増加した。さらに,グルコ-スや土壌に存在する有機物の分解に対するPCPの影響をCO_2放出でとらえると,PCP濃度の差の効果は逆にあらわれた。このことは、農薬が栄養物の動向に与える影響は栄養物の種類によってことなることを示し、その後の微生物による利用にも影響し、さらに農薬分解微生物の動態にもはねかえると推定した。
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[Publications] 佐藤 匡: "農薬の非標的生物に対する影響ー微生物,特に土壌中の微生物ー" 植物防疫. 44. 501-505 (1990)
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[Publications] Kyo SATO: "Establishment of PesticideーTolerance of Bacterial Cells in Soil" Pesticide Science. 29. (1991)
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[Publications] Kyo SATO: "Enrichment of PesticideーTolerant and/or pegrading Soil Bacteria" Pesticide Science. 29. (1991)
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[Publications] 佐藤 匡(分担執筆): "土壌環境ー保全と機能の増進ーIGEシリ-ズ13" 東北大学遺伝生態研究センタ-, 70 (1991)