1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02660083
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
牧野 志雄 名古屋大学, 農学部, 教授 (80000842)
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Keywords | 細菌胞子 / 発芽 / ズブチリシン様酵素 / コルテックス分解酵素 |
Research Abstract |
細菌胞子の発芽と胞子形成機構の分子的理解を目指した本研究課題の中、本年度は発芽誘起物質の同定と蛋白質化学的研究を重点的に行った。細菌(Bacillus cereus)胞子より発芽と共に遊離するプロテア-ゼに着目し、その酵素の発芽に及ぼす影響につき検討した。遊離したプロテア-ゼ並びに発芽自体に及ぼす種々のプロテア-ゼインヒビタ-の効果や本プロテア-ゼの基質特異性等を検討することにより、本酵素はズブチリシン様酵素であることが判明した。本酵素はコルテックス分解酵素と共に発芽上清へ遊離し、これらの出現と発芽過程の進行との間には良い相関が認められ、本酵素が発芽の始動に関与していることが示唆された。発芽上清に遊離したズブチリシン様酵素の精製をアフィニティカラムを用いて行い、2種類の酵素を電気泳動的に均一成分として得ることができた。これらはズブチリシンBPNに対する抗体と反応せず、かつ尿素などの変性剤に対し抵抗性を示すなどこれまで知られているズブチリシンとは異なる性質を持つことが認められた。本プロテア-ゼに対する阻害剤は発芽の阻害をも引き起こした。しかし、発芽現象の指標であるコルテックスの分解を担うコルテックス分解酵素の活性はプロテア-ゼ阻害剤によって阻害されなかった。この事実はズブチリシン様酵素がコルテックス分解酵素の活性化を促進していることを示唆している。遊離したズブチリシン様酵素及びコルテックス分解酵素活性は、発芽自体の温度・pH依存性とは異なる各々に特徴的な温度・pH依存性を示した。これらの酵素は胞子内では遊離状態とは異なる分子状態に保たれているためと考えられた。コルテックス分解酵素は約70%程度の純度で精製された段階である。今後、両酵素の抗体を調製し、それらを用いてズブチリシン様酵素によるコルテックス分解酵素の調節メカニズムの研究を展開したい。
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[Publications] Makino,Shio: "Subtilisinーlike enzyme from germinated spores of Bacillus cereus and its possible involvement in germination" Agric.Biol.Chem.(1991)
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[Publications] Makino,Shio: "Purification and characterization of spore lytic enzyme from Bacillus cereus spores" J.Gen.Microbiol.(1991)