1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02660159
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 雅一 京都大学, 農学部, 助手 (10144346)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福嶌 義宏 京都大学, 農学部, 助教授 (00026402)
|
Keywords | 渓流水質 / 森林流域 / 飽和地下水帯 / 強酸性陰イオン / pH / SiO_2 |
Research Abstract |
森林の持つ公益的機能の一つとして森林からの流出水が良好な水質を供給することがあげられているが、水質形成過程は未知の点が多い。本研究では、雨水,不飽和土壌水,飽和地下水,湧水,渓流水の各水質の測定と、雨量,土壌水分,地下水位,流域流出量の水文観測を桐生試験地(滋賀県大津市)において行なった。本年度に得られた主要な資料は、5.99haの流域と0.70haの源頭部小流域のpH,電気電導度,水温の連続自記記録,源頭部小流域内の約40本の地下水井戸のpH,電気電導度,Cl^ー,NO_3^ー,SO_4^<ーー>,SiO_2等溶存物質濃度である。雨水にほとんど含まれず,土壌からの溶出によって濃度形成されるSiO_2濃度は,流域内の水移動を反映した濃度分布を示し、常に地下水が存在する飽和地下水帯濃度と,降雨時のみ地下水が発生する井戸の濃度は明確に分離される結果が得られた。また、強酸性陰イオンであるCl^ー,NO_3^ー,SO_4^<ーー>は、地中での移動がそれぞれ異なり、特微的な濃度分布と時間変化を示す結果であった。すなわち,土壌による吸着,溶出が少ないCl^ーは雨水の濃度を流下過程で保存し、流域で比較的均一な濃度分布を示すのに対して,NO_3^ー,SO_4^<ーー>は表層土の有機物分解を起源とする濃度上昇が顕著である。さらに、NO_3^ーは飽和地下水帯での滞留にともない濃度が低下し、流出水のNO_3^ー濃度が低く保たれているという観測結果が示された。これらの知見は、いずれも山地流域の水質形成を流域内の水分条件とともに理解することの必要性を示している。現時点では観測期間が短いので、今後観測を継続し、土壌水,流出水のpH,電気電導度の空間,時間的変化と強酸性陰イオン(Cl^ー,NO_3^ー,SO_4^<ーー>)の濃度変化の対応を明らかにしていきたい。
|