1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02660162
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
齋藤 秀樹 京都府立大学, 農学部, 教授 (20026636)
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Keywords | スギ花粉症 / 雄花生産量 / 年齢系列 / 凶作 / 花粉形成 / 生殖力 |
Research Abstract |
スギ花粉症患者が1975年頃から急増した背景として、第2次世界大戦後の拡大造林政策によって増大したスギ造林地が着花する年齢を越えたことがあげられている。空中スギ花粉の増加が主な原因であるとしても、スギ林の雄花、花粉生産に関する資料はきわめて少ない。そこで、加齢によるスギ林花粉生産量の推移を調べた。調査法はリタートラップ法である。調査林は著者の永久調査林である京都市貴船の3植栽林と和歌山県高野山の約600年生墓地林のほかに、立地条件に差のない12〜90年生の7植栽林を追加した。1992年春の雄花開花数は少なく、豊作であった前年の100分の1の林分もあった。凶作年とされた年のなかでも1992年は際立って少量である。この大凶作年の雄花開花数(林分当たり)は林齢と無関係に少く、豊作年に認められた50年生以上で雄花は頭打ちとなって、その後は増加しないというような林齢に対する傾向的変化はみられなかった。したがって、凶作年の空中スギ花粉は、その地域のスギ林面積の齢構成とは関係がなく、その面積に比例することになる。スギ雄花の着花は豊凶差が著しく大きいから、スギ花粉症の予防には雄花の豊作を予知することが大切である。スギの雄花は、開花する前年の12月に花粉の形成を終えている。そのために冬季の北西風によって多数の未開花雄花(つぼみ)が落下する。この冬季落下のつぼみは卵形で、鱗片には黄白色の花粉のうをもち、そのなかに花粉を含むのがふつうである。今回の調査林である老齢墓地林でも冬季につぼみが落下した。しかし、老齢林のつぼみは細長く、鱗片間に隙間があり、外形は開花後の雄花に似ていた。これらのつぼみを分解すると、鱗片下部につくはずの花粉のうが見当らず、カビが付着して腐ったように黒色で、花粉は全く存在していなかった。これは萎縮・流産(abort)したと考えられる。スギも600年にも達すると花粉形成機能が低下するといえる。
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