1991 Fiscal Year Annual Research Report
逃げ面VC被覆により自己研磨特性をもたせた木工用刃物の開発研究
Project/Area Number |
02660166
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
加藤 忠太郎 山形大学, 教育学部, 教授 (40023444)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横地 秀行 名古屋大学, 農学部, 助手 (60124723)
|
Keywords | 自己研磨 / 木材 / 逃げ面 / 摩耗 / 回転切削 / VC(炭化バナジウム) / 被覆厚さ / 被覆刃物 |
Research Abstract |
本研究は、刃物の逃げ面だけに非常に薄くVC(炭化バナジュウム)を被覆することにより、逃げ面側の摩耗を抑制する一方、被覆をしていないすくい面側から主に摩耗を進行させて、刃先が常に鋭利に維持される自己研磨と呼ばれる特性をもたせた木工用刃物の開発を目的として行われた。 昨年度(初年度)は、気乾状態の木材の低速平削り試験を行い、実験したほとんど全ての樹種の切削に対しては、VC被覆刃物は、良好な自己研磨特性を示すことが実証できた。これらの結果に基づいて、今年度は、シリカ含有木材のメラピの高速回転切削を行った。メラピの切削では、実験した全ての鋼種に対して、VC被覆刃物は自己研磨特性を示した。ただし、硬さの小さい耐摩耗性の小さい鋼種ほど、寿命が短くなった。実用的に通用するほど長い寿命を示した鋼種は、今回実験した中では一番強力な粉末高速度鋼のASP60とHAP72だけであった。逆に、比較のために実験したシリカを含有しないスプル-スの切削では、一番軟弱なSKS3、SX105V、SKD61等の合金工具鋼だけが、実用性のある自己研磨特性を示した。なお、ASP60とHAP72の被覆刃物は、スプル-スの切削には自己研磨特性は現れないものの、VCによりかなり耐摩耗性が改善され、スプル-スにも十分に実用性を有する。 これらの結果に基づいて、自己研磨の進行速度に関係する因子として、次に、被覆層の厚さに着目した。上記の実験で中間的な耐摩耗性を示したSKH51に、いろいろな厚さのVCを被覆した刃物は、メラピの切削において、被覆厚さが10μmから25μmまで著しく大きい範囲にだけ、実用性のある自己研磨特性を示すこと、逆にスプル-スの切削において、実用性のある自己研磨特性を得る条件は、刃物母材がSKS3のときで被覆厚さが1μmから6μmまでの比較的小さい範囲であることが分った。
|