Research Abstract |
樹木の年輪中に含まれる微量元素は,その分布状態や濃度レベルが樹種や生育環境によって異なることが予想される.平成2年度の研究で,ニッケル,クロム,マグネシウム含量の高い蛇紋岩地帯,アンチモン汚染土壌,および銅鉱山選鉱場周辺に生育する樹木中の微量元素を調べ,,環境指標植物としての樹木の有効性について報告した.今年度は,年輪中での微量元素の挙動に及ぼす影響について,樹種,樹齢,生育環境などの観点から検討した. 日本に広く分布し,代表的な針葉樹の一種であるスギの年輪中でのアルカリ金属について調べた.試料は,生育環境,樹齢等を考慮し,屋久島(鹿児島県,樹齢1400年),芦生(京都府,樹齢115年)および徳山(山口県,樹齢65年)で採取した。アルカリ金属であるカリウム,ナトリウム,ルビジウム,およびセシウムの屋久島産スギ年輪中での濃度分布は,そのレベルは異にしているが,年輪の半径方向での挙動は著しく類似していた.このことは,樹齢や生育環境の違う芦生産および徳山産のスギについても同様の結果を得た.また,広葉樹で,同じブナ科に属するミズナラ,クリ,コナラの年輪中でのアルカリ金属についても,アルカリ金属の挙動は類似していた.しかし,その分布のパタ-ンは上記のスギとは全く異なっており樹種による影響が顕著に見られた.さらに,海水の影響下で生育している数種のマングロ-ブの年輪中のアルカリ金属についても検討したが,その分布状態はスギやブナ科の樹種とは全く異なったパタ-ンを示し,種の特性をよく表していた.さらに,今年度,樹木葉中の元素組成からみた熱帯材の特性について検討した.試料数が多く現在も分析および解析中であるので,結果を得しだい公表していく予定である.
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