1990 Fiscal Year Annual Research Report
海洋廃棄物(プラスチック及び漁網・ロ-プなど)による漁場汚染の実態調査研究
Project/Area Number |
02660191
|
Research Institution | 東京水産大学 |
Principal Investigator |
兼廣 春之 東京水産大学, 水産学部, 助教授 (80134857)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 皎 東京水産大学, 水産学部, 教授 (90026485)
|
Keywords | 東京湾環境調査 / プラスチック廃棄物 / 海洋廃棄物 / 漁場汚染 / 漁具・漁網 |
Research Abstract |
本研究では、東京湾の生物資源環境に及ぼすプラスチック廃棄物の影響を調べることを目的として、小型底曳網により、横浜沖を中心とした湾央部の10ケ所の定点において40回の操業を行い、海底に堆積しているゴミの調査を行った。回収したゴミはプラスチック、繊維、漁具・漁網、その他(金属、ガラス、木片など)の4種に分類し、定点別に個数、重量組成を調べた。特に、プラスチック類については比重を測定し、素材の同定を行った。 調査の結果、回収したゴミの総数は約550個、その内訳はプラスチックが67%と最も多く、繊維4.4%、漁具・漁網9%と、高分子材料から成る廃棄物が全体の80%を占め、その他の廃棄物は20%に過ぎなかった。一方、重量(総量約35Kg)組成ではプラスチックは11%にしか過ぎず、それに対して漁具・漁網が64%と圧倒的に大きかった。定点別の分布を見ると、個数では平均的に分布していたが、重量では特に沿岸に近い漁場近辺(アナゴ及びタコ)の定点に重点的に分布しているのが認められ、重量に占める漁具の割合が大きいことが認められた。 比重測定の結果、プラスチック類の60%以上が比重1前後(ρ=0.85〜1.1)の軽い日用食品容器や包装袋など(ポリエチレンやポリスチレン)であった。これらプラスチック類が各定点にほぼ均等に分布していることより、これらの日用廃棄物は河川からの流出により、長期間の漂流後海底に沈下、堆積したものと考えられた。 網の掃海面積から、単位面積(1ha)当りのゴミの個数及び重量の分布量を計算すると、それぞれ4個及び150g程度と比較的少なかったが、東京湾全体(全面積)に換算すると約40トンにも達するものと推定される。これらのプラスチック廃棄物の問題は量的な点だけでなく、廃棄物が非分解性であり。蓄積され続け生物生産の環境場を阻害していくことにある。実際、回収されたプラスチック類はほとんど劣化、分解の様子は認められなかった。 今回は東京湾の中でも湾中央部付近を重点的に調査したが、湾口部やゴミの集積しやすい湾奥部及び日用プラスチック製品の流出源と思われる河口付近での調査は行えなかった。今後は、これらの未調査地点での調査とともに、湾内でのゴミ(特に、比重の小さいプラスチック類)の流出、集積機構を解明する必要がある。 今年度の調査結果は平成3年度春季学会(日本水産学会)に発表し、学会誌に投稿の予定である。
|