1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02660210
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Research Institution | Tokyo University of Fisheries |
Principal Investigator |
木村 茂 東京水産大学, 水産学部, 助教授 (10017056)
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Keywords | サケ / コラ-ゲン / サブユニット / 器官特異性 |
Research Abstract |
サケ科魚類真皮の主要な結合組織タンパク質であるI型コラ-ゲンは硬骨魚類に特有のサブユニット鎖(α3)をもち,3本の異種α鎖からなるα1α2α3ヘテル分子として存在する。一方,サケ科魚類筋肉のI型コラ-ゲンはα3を欠く(α1)_2α2ヘテル分子を形成している。昨年度の研究において,シロザケ真皮からα3鎖を単離して諸性状を調べ,α3はα1から分化したものと推定した。 本年度の研究では他の器官におけるα3の分布を知るため,シロザケの鰾と硬骨(脊椎骨)からI型コラ-ゲンを単離し,サブユニット鎖組成を調べた。畝椎骨はEDTAで十分の脱灰した後に酸可溶性コラ-ゲンを単離したが,鰾は酸可溶性コラ-ゲンをほとんど含まないので,常法に準じて,1%ペプシンを用いてペプシン可溶化コラ-ゲンを調製した。両器官コラ-ゲンのアミノ酸組成は昨年度に報告した真皮と筋肉のそれとよく類似していたが,鰾のコラ-ゲンはプロリンとリシンの水酸化率の高いことが特徴的であった。少に,両器官のI型コラ-ゲンのα鎖をCMーセルロ-スで分画したところ,いずれもα3を含むα1α2α3ヘテロ分子として存在することが判明した。 以上のごとく,シロザケ諸器官のI型コラ-ゲンは調べた限りでは,筋肉のみがα3を欠くという器官特異性を示した。すなわち,筋肉ではα3遺伝子の発現が抑制されてα1α2α3ヘテロ分子を形成することができず,他の脊椎動物I型コラ-ゲンに共通する(α1)_2α2ヘテル分子が認められた。この事実はα3とα1の類似性を支持している。しかし,硬骨魚類に固有のα3がI型コラ-ゲン分子内でどのような役割を担っているのかは不明である。α1がα3に置換することによって,分子の性質にどのような変化が生じているのかを解明したい。
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Research Products
(1 results)