1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02660229
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長澤 徹明 北海道大学, 農学部, 講師 (30002067)
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Keywords | 傾斜農地 / 水食 / USLE / 融雪流出 / 小流域 / 土壌流亡 / 浮流土砂 / 土地利用 |
Research Abstract |
農業が環境に与える影響は、極めて多面的である。農地には、マイナス因子を吸収緩和する性質がある一方、営農は地域環境への負荷発生源ともなり得る。そして永続的な農業を営むためには、農地・農業が地域のなかで安定した系として存在する必要がある。ここでは、土壌流亡問題をとおして、農地を含む小流域の保全を考える。土壌はかけがえのない土地資源であるが、水系に流入した場合には汚濁物質として広範囲に影響を及ぼす。本研究は、積雪寒冷条件下での土壌流亡問題を検討し、北方域での持続的農業と農林小流域保全を考えるものである。以下は、これまでの現地観測と調査のなかで明らかになった知見である。 傾斜農地の水食現象に対する影響因子は多いが、降水の流出状況が最も重要である。侵食流亡土量を予測するUSLEでは、これを定量化して対象地域の侵食性を評価している。積雪寒冷地では、冬期間降水量を係数化して降雨流出係数に加えているが、これには強い地域性が認められる。冬期間降水量から融雪流出係数を求めるための換算係数は、北海道南部の場合USLE設定値の0.015となり、極めて小さい値である。 出水時の河川浮流土砂濃度は、降雨や流量などの水文量と強い相関性を呈する。融雪時の浮流土砂流送挙動は、降雨時より概ねおだやかな傾向となり、例えば同程度の出水規模では降雨時の方が流送土砂量は大きい。ただし、融雪時に降雨が加わるときには、大量の土砂が流送される。また、融雪の支配的因子である気温条件が浮流土砂流送挙動にも関与し、ほぼ日単位であらわれる融雪出水に対応する積算気温は、そのときの流送土砂量と正の相関関係にあることが明らかになった。 今後は、試験流域での調査・観測を続行して資料の収集につとめるとともに、積雪寒冷地の小流域保全に対して農業土木的見地からの検討を行う予定である。
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[Publications] 長沢 徹明,梅田 安治,井上 京,李 里漫: "傾斜枠試験による土壌流亡挙動の研究(I)" 北海道大学農学部邦文紀要. 17(1). 11-17 (1990)
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[Publications] 長沢 徹明,梅田 安治,李 里漫: "傾斜枠試験による土壌流亡挙動の研究(II)" 北海道大学農学部邦文紀要. 17(2). 129-136 (1990)
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[Publications] 長沢 徹明,梅田 安治,李 里漫: "傾斜枠試験による土壌流亡挙動の研究(III)" 北海道大学農学部邦文紀要. (1991)