1992 Fiscal Year Annual Research Report
慢性てんかん焦点形成における樹状突起異常電気活動の役割に関する研究
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02670060
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
丸 栄一 日本医科大学, 医学部, 助教授 (80221597)
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Keywords | 慢性電流源密度解析 / 樹状突起電位 / 大脳辺縁系海馬 / 発作電気活動 / 実験てんかんモデル / キンドリング / 電気生理学 |
Research Abstract |
本年度の研究では「慢性電流源密度解析システム」を用いて次の3つの課題を検討し、海馬CA1錐体細胞の樹状突起における正常電気活動とてんかん性異常電気活動の差異を明らかにした。 1.海馬CA1錐体細胞の正常な樹状突起電気活動:これまで海馬錐体細胞の活動電位は樹状突起部ではなく細胞体部で発生すると報告されてきた。しかし、慢性電流源密度解析システムを用いた検討により、活動電位の初発部位は細胞体部から400μm離れた尖端樹状突起部であることが判明した。ここで発生した活動電位は尖端樹状突起上を細胞体に向かって順行的に伝導し、細胞体部において最大振幅に達することが明らかとなった。 2.てんかん発作発現時における樹状突起電気活動の変化:てんかん発作の直前あるいは発作発現中に、次の2つの樹状突起異常電気活動が観察された。1つは、発作誘発刺激中、活動電位の初発部位が尖端樹状突起先端部から次第に樹状突起の起始部または細胞体部に移動し、尖端樹状突起上をその先端部に向かって逆行的に伝導するようになることである。他の異常電気活動は、発作誘発刺激中、尖端樹状突起の先端部で、異常に持続時間の長い興奮性シナプス電流が周波数増強を受けて次第に振幅を増しながら出現してくる現象である。発作発現中においても、この異常な興奮性シナプス電流は尖端樹状突起のほぼ全域で優勢に出現した。 3.てんかん焦点形成に伴う樹状突起電気活動の持続的な変化:5日間のキンドリング手続きにより海馬にてんかん焦点が形成されるにしたがい、発作間欠期においても、尖端樹状突起先端部での活動電位発生は著しく抑制され、樹状突起起始部または細胞体部での活動電位発生が優勢となった。また、尖端樹状突起先端部での異常な興奮性シナプス電流の発生もてんかん焦点が形成されるにしたがい増強される傾向にあった。
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