Research Abstract |
希土類元素の生体影響を明らかにする目的で,マウスに投与した一連の希土類元素の生体内分布と臓器中カルシウム濃度の変動を検討した。 生体試料中の希土類元素の定量法に関しては,平成2年度に蛍光法によるユ-ロピウム(Eu),テルビウム(Tb),およびジスプロシウム(Dy)の定量法を確立したので,今年度はこれら3元素混在試料中の同時定量条件を確立した。さらにイオンクロマトの併用により生体試料中Eu,Tb,Dyの検出感度向上を達成した。その他の9種の希土類元素[イットリウム(Y),ランタン(La),セリウム(Ce),ガドリニウム(Gd),ホルミウム(Ho),エルビウム(Er),およびイッテルビウム(Yb)]についてもイオンクロマトによる分離後,アルセナゾIIIを用いるポストカラム反応による定量条件を確立した。マウス(ICR,♂,5週令)に9種の希土類元素の塩化物を25mg元素/kg体重静脈内投与し,投与20時間後の臓器分布を調べた。その結果,投与された元素はいずれも肝臓,肺,脾臓に高濃度に分布すること,投与元素の分布した臓器では対照群に比べてCa濃度が著しく増加することがわかった。個々の元素により臓器中濃度やCa増加の割合には差はあるものの全体の傾向は似ており,平成2年度に明らかにしたEu,Tb,Dyの挙動とも一致していることから,一連の希土類元素の生体内挙動の類似性が示唆された。Eu,Tb,Dyについては投与量の違いと同時投与の影響を検討した。各元素を単独で10mg元素/kg投与した場合,投与元素はやはり脾臓,肝臓,肺に分布した。3元素の等量混合物(各10mg/kg,全体で30mg/kg)投与では,肝臓中濃度は各々単独で投与した場合と似た値を示したが,肺では単独の場合の20〜30倍濃度が検出された。しかし混合物投与でも各臓器における3つの元素濃度はほぼ一致していることから,同時に投与されたEu,Tb,Dyの吸収,分布の挙動は互いに似ていることが示された。
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