Research Abstract |
乳児嘔吐下痢症に対する母乳哺育の予防的意義を明らかにすることを目的として,1)妊産婦血清及び初乳中のヒトロタウイルス(HRV)に対する特異抗体の保有率,分布の検討,2)さらに児の乳児期の母乳哺育と本下痢症罹患の質問票調査を実施した.成績を以下に要約する. 1.初乳及び母体血清におけるロタウイルス(HRV)抗体 母体血清(794例),臍帯血清(291例),初乳(304例)について,出産経験の有無別に検討したところ,1)HRV抗体陽性率は,妊娠末期血清(306例)では初産婦群が94.5%,経産婦群が91.1%,また,分娩後血清(311例)では初産婦群が94.3%,経産婦群が93.0%であり,両群の間に差異がなかった.2)母体血清の抗体価分布は,初産婦群が20ー40未満をピ-クとする分布であったのに対して,経産婦群は初産婦群より高い60ー80未満をピ-クとする分布であった.初乳の抗体価においても,母体血清と同様に経産婦群は,初産婦群に比べて高い分布であった.3)母体血清,臍帯血清及び初乳の平均抗体価は,第2子出産群,第3子出産群が初産婦群に比べて有意に高かった.4)出産間隔が1ー2年と短い経産婦群は,母体血清及び初乳の抗体価が初産婦群に比して高いが,出産間隔が4年以上の経産婦群は初産婦群とほぼ同じ抗体価であった. 2.乳幼児嘔吐下痢症の罹患調査について 1588人の児について解析を行ったところ,乳児期における育児栄養法は,母乳栄養は36.4%,混合栄養が55.7%,人工栄養が7.9%であった. 1歳未満での乳児嘔吐下痢症の罹患率は,母乳栄養群は2.6%であったのに対して,混合栄養群では5.5%,人工栄養群では4.8%と有意に高いことが示された.しかし,1歳以上での罹患率では,このような栄養法による差異はみられなかった.母乳栄養群の殆どが6カ月以上の母乳育児であり,1歳未満の本下痢症罹患に対する予防効果が示唆された.
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