1990 Fiscal Year Annual Research Report
コカインのファ-マコキネティクスとその法医中毒学的応用
Project/Area Number |
02670258
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福井 有公 京都大学, 医学部, 教授 (10025588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岡 清 京都大学, 薬学部, 助手 (50109013)
桑原 智恵美 京都大学, 医学部, 助手 (10115842)
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Keywords | Cocaine / Pharmacokinetics / Disposition |
Research Abstract |
濫用薬物のひとつであるコカインは、“クラック"と称する遊離塩基の形で欧米の若年者を中心に濫用例が急増し、わが国においても看過できない重要な課題となっている。本研究では、薬物動態理論に基づきコカインの生体内動態を支配する重要な因子のひとつである肝臓における局所動態を定量的に解析した。ラットをMortimore法に基づき開放系回路でin situ潅流肝を作成し、0.5ー3mg/ml塩酸コカインを門脈側に投与した後、下大静脈側より全ての流出潅流液を経時的に採取し、HPLCによりコカイン濃度を測定した。また、肝実質細胞への分布および消失を示さないReference物質としてevans blueー4(w/v)%albumin結合体を使用し同様の実験を行った。得られたデ-タから、モ-メント理論に基づいて各種動態パラメ-タを算出しコカインの肝臓一回通過における動態を定量的に解析した結果、1mg/mlカコイン投与の際のAUCは投与量依存的に増加し(r=0.991;p<0.01)、AUC/Doseは投与量に比例し、MTTは投与量非依存的な結果が得られた(r=0.356;p<0.05)。3mg/mlコカイン投与の際のt_HはRefernce物質と比べて15倍という著しい増大が認められ、肝組織への強い親和性が示唆された。また、肝臓一回通過の際の肝からの回収率F_Hは、Refernce物質では99.7±5.5%で投与量に関係なくほぼ一定であるのに対して、コカインでは投与量の増加(50ー300μg)と共に12.4ー43.4%と比例的に増加した(r=0.827;p<0.01)。コカインの肝に於ける抽出率E_Hは非常に大きく、投与量の増加と共に87.6ー56.7%と減少し、血中濃度が上昇するとコカインの"spillover"が生ずることが示された。肝潅流法によるコカインの肝臓一回通過における動態は、肝との強い相互作用により非線形動態を示すことが明かとなった。また、中毒学的見地からは、コカインの全身系でのクリアランスに対する肝でのクリアランスの寄与も重要であることが示唆された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 桑原 智恵美,福井 有公: "総説:コカインの濫用と代謝" 法中毒. 9(1). (1991)
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[Publications] Chiemi KUWAHARA et al.: "Evaluation of Cocaine Disposition Using Rat Liver Perfusion" Forensic Sci.Int.