1991 Fiscal Year Annual Research Report
中枢性低酸素換気抑制における内因性アデノシンり役割
Project/Area Number |
02670333
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西村 正治 北海道大学, 医学部附属病院, 助手 (00208224)
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Keywords | アデノシン / ジピリダモ-ル / テオフィリン / 低酸素 / 換気応答 / 低酸素換気抑制 |
Research Abstract |
アデノシンは中枢性には呼吸を抑制する脳内神経調整物質であり、一方末梢性には外的に投与した場合、末梢化学受容器を介して呼吸を刺激すると報告されている。そこで、ヒトの低酸素換気応答における内因性アデノシンの役割を明らかにする目的で健常成人9名を対象に、ジピリダモ-ル(0.5mg/kg)あるいはプラセボ静注後、低酸素換気応答(isocapnic progressive hypoxia and subsequent hypoxia:SaO2=80%で20分間維持)を二重盲検法によって調べた。さらに、そのうち4名ではアデノシン受容体拮抗作用を有するテオフィリン(5mg/kg)を前投与して同様の実験を繰り返した。急性の低酸素換気応答値(SaO2の低下に対する分時換気量増加の傾き)は、細胞外液中のアデノシン濃度を高めその作用を強めると期待されるジピリダモ-ルにより有意に増大したが、テオフィリンによりその効果は消失した。低酸素持続負荷中には、プラセボ投与の場合も換気量は急性負荷直後のピ-ク時に比べ有意に低下した。ジピリダモ-ルはその傾向をさらに強めたが、テオフィリン前投与によりその効果は打ち消された。血圧は、ジピリダモ-ル、プラセボ投与の場合とも低酸素負荷中に有意の変動はなく、両検査間にも有意差は認めなかった。以上の結果より、ヒトの低酸素換気応答には内因性アデノシンが関与しており、末梢性の換気刺激効果と中枢性の抑制効果の両者を修飾している可能性が示唆された。 なお、ヒトの呼吸調節におけるアデノシンの役割をさらに検討するためには血中のアデノシン濃度を測定することが望ましいが、血中の代謝速度がきわめて早く、かつその濃度も微量であるため正確な測定(高速液体クロマトグラフィ-による)が非常に難しく、現在その精度をさらに上げるため検討を重ねている。
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