1990 Fiscal Year Annual Research Report
肺小細胞癌のインピトロ浸潤転移モデルの作成と細胞外マトリックスの役割の解明
Project/Area Number |
02670350
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
田村 伸介 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (00122325)
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Keywords | 肺小細胞癌 / インビトロ浸潤転移モデル / 細胞外マトリックス / カテプシンB |
Research Abstract |
多くのステップより成り立つ肺癌の浸潤転移機構の中で,その最初の段階で癌細胞が内皮細胞や中皮細胞等の宿主細胞と接着し浸潤していく過程を直接で観察できるヒト由来培養細胞を用いたin vitro癌浸潤実験モデルの作成を試みた。すなわち,ヒト肺静脈血管内皮細胞及び胸膜中皮細胞の継代培養に成功し,単層培養したこれらの細胞層の上に,浮遊して増殖する樹立肺小細胞癌細胞株(OC10)を重層培養すると癌細胞はまず内皮細胞等に接着し,さらに細胞間隙よりその下に浸入しコロニ-を形成した。これは臨床での血中や胸水中に遊離した肺癌細胞が新たな転移巣を形成していく最初のステップと考えられる。またこの細胞層下に侵入した1cm^2あたりの浸潤コロニ-数を位相差顕微鏡で計数することで,癌細胞の浸潤能を定量評価できた。さらにこのヒト肺小細胞癌細胞株からクロ-ニングにより著しく浸潤能の異なる高浸潤系及び低浸潤系の2つのクロ-ン(SM10,10N)を分離し得た。これらのクロ-ンは形態や増殖速度などの細胞の一般性状はほぼ同一なものと考えられたが,浸潤能において明確な相異を認めた。具体的にこの実験系を用いて定量された浸潤能(上述のコロニ-数)は高浸潤系では低浸潤系の約4ないし5倍に及んだ(SM10;1580個/cm^2,10N;307個/cm^2)。癌細胞の浸潤能獲得に細胞接着に関与する細胞外マトリックスを分解する酵素の産生が関与が挙げられ,その中でSloaneらにより報告されているカテプシンBについて免疫細胞化学染色により検討を加えた。分離した浸潤能の異なる肺小細胞癌細胞の2つのクロ-ン,SM10,10Nでその染色性を比較した結果,高浸潤系で多くの細胞にカテプシンBが証明され,低浸潤系では殆どの細胞で陰性であり、その欠損が考えられた。癌細胞の浸潤能を規定する一つの要素としてカテプシンBが関与している可能性が示唆された。今後更に酵素活性の測定も試み,より明らかにしていきたい。
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