1990 Fiscal Year Annual Research Report
体性感覚路の視床からの投射系路および大脳内連合機序の研究
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02670370
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
辻 貞俊 産業医科大学, 医学部, 講師 (30117171)
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Keywords | 体性感覚誘発電位 / トポグラフィ- / 一次大脳感覚野 / 大脳皮質誘発電位 / 電気刺激 / 遠隔電場電位 |
Research Abstract |
1.正常者で正中神経および後脛骨神経電気刺激による体性感覚誘発電位(SEP)を頭皮上16〜22個の記録電極より記録し,SEP各成分のトポグラフィ-および頭皮上分布を解析した。上肢と下肢刺激ではSEP皮質成分の頭皮上分布が全く異なり,それぞれ一次大脳感覚野(SI)を中心に広汎な初期皮質成分の出現がみられた。前頭部で記録されるSEP皮質成分はSI3b野起源の水平双極子によるものと,SI野からの連合線維および視床を介する経路による運動野起源のものがあることが明らかとなった。睡眠の影響を検討すると,遠隔電場電位(N16),皮質成分(N20)ともに,覚醒より睡眠II期に入ると潜時の有意な延長がみられたが,トポグラフィ-,頭皮上分布には変化はみられなかった。2.ネコにてSEPの皮質および頭皮上出現メカニズムを解析した。上肢電気刺激によるSEPを頭皮上,頭蓋骨,硬膜,大脳皮質上,大脳皮質内でそれぞれ記録すると,SEPの遠隔電場電位,皮質成分ともに波形および潜時が,それぞれの記録部位で大きく異なることが明らかとなった。大脳波質内および皮質上で記録されるSEPは頭皮上SEPの波形と全く異なり,皮質上および皮質内SEPでは短潜時成分の出現はみられず,各SEP成分の振幅も5〜20倍大きくなる。さらに,皮質上SEPと頭皮上SEPの波形,潜時に類似性はなく,皮質上SEPは限局性分布に対して,頭皮上SEPは広汎に分布する。前頭葉からも感覚野とは異なった皮質上SEPが記録され,前頭葉と頭頂葉の電極で極性の逆転した初期皮質成分の出現がみられた。SI野でも部位により皮質上SEPの波形,潜時に大きな相違がみられた。これらの結果は頭皮上で記録されるSEPは,単純に皮質内ないし皮質上SEPを反映しているのではなく,種々の皮質上大脳誘発電位の合成波であることを示唆している。また,前頭葉にも視床からの投射系があり,遠隔電場電位は脳内を伝播しないと考えられる。
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