Research Abstract |
1.正中神経刺激による体性感覚誘発電位(SEP)初期皮質成分(N20,P20,P22,P23,N24)に睡眠が与える影響を正常者10名で検討した。頭皮上に16個の記録電極を配置し、左正中神経を手首で電気刺激し、覚醒期(AW),睡眠第2期(SII),睡眠第3,第4期(SIII/IV),REM期(REM)の各段階でSEPトポグラフィ-を記録した。N20,P20潜時はAWと比べて、SII,SIII/IVで有意に延長したが、REMとAWでは有意差をみとめなかった。N20振幅はAWと比べて、SII,SIII/IVで有意に低下したが、REMとAWでは有意差をみとめなかった。AWでP22,P23,N24は全例単相性を示したが、SIIでは9例でP22,P23は2峰化あるいは平坦化し、5例でN24の2峰化がみられた。しかし、REMではAWと同じ波形にもどった。この結果は体性感覚路の視床からの投射系路および大脳内連合が睡眠により影響されることを示している。2.ネンブタ-ル麻酔下でネコの頭皮上,大脳皮質上,皮質内SEPを記録し、SEPの頭皮上出現機序を検討した。ネコ上肢電気刺激による頭皮上SEPではP9,N15が初期皮質成分であり、P4,N7は皮質下成分である。大脳感覚野破壊によりP9,N15は消失する。P9,N15の頭皮上分布は刺激対側前頭,中心,頭頂,側頭部に広汎に出現する。SEPを頭皮,側頭筋,頭蓋骨,硬膜,大脳皮質上の各部位で記録すると、P4,N7は頭蓋骨,硬膜,大脳皮質上では不明瞭となる。P9,N15は頭蓋骨上記録より振幅が著増し、皮質上記録では頭皮上より6〜45倍の振幅となる。皮質上から記録されるN15潜時は頭皮上N15より2.1msecの潜時延長がみられ、皮質上・内SEPと頭皮上SEPの波形は異なる。大脳皮質上分布は感覚野(SI)上2〜5mm間隔の記録でも電極毎に波形,潜時,振幅が異なる。頭皮上SEPの皮質下成分は頭皮上伝播が推測され、皮質成分も皮質上SEPが単純に頭皮上に投射されたものではない。
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