1991 Fiscal Year Annual Research Report
血小板による血管内皮細胞傷害とその防御機序における細胞内情報伝達物質の意義
Project/Area Number |
02670387
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
岸 幸夫 東京医科歯科大学, 医学部第三内科, 助手 (70186211)
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Keywords | 内皮細胞 / 細胞傷害 / 血小板 / 環境ヌクレオチド / イノシト-ルリン脂質 / カルシウム / アデニンヌクレオチド / プロスタサイクリン |
Research Abstract |
(1)活性化血小板による血管内皮細胞傷害におけるカルシウムの役割:前年度の研究により、活性化血小板が内皮細胞傷害をもたらすことを示した。血小板による細胞傷害は、cyclic AMPの低下を伴い、細胞内cyclic AMPを増加させる薬剤で予防されることから、カルシウムの関与が推察された。実際、Furaー2法による検討から、活性化血小板は内皮細胞内のカルシウム濃度の一過性の急速な上昇とその後の緩徐な上昇をもたらし、初期のスパイク相はアピラ-ゼ活性化血小板を前処置することにより消失した。また、活性化血小板内の種々のアゴニストの濃度を測定したところATPおよびADPがスパイク形成に関与していることが示唆された。さらに、活性化血小板は内皮細胞内イノシト-ル三リン酸を増加させた。このIP_3の増加はプロスタサイクリンにより一部抑制された。ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗剤は内皮細胞傷害に対して弱い抑制効果しかなく、活性化血小板によるカルシウム代謝の亢進は、細胞内カルシウムストアからの動員の関与が大きいと考えられた。また、cyclic GMPも抑制効果がみられなかった。以上より、活性化血小板による内皮細胞傷害のメカニズムとして細胞内カルシウムが関与し、cyclic AMPは、カルシウムの抑制性モデユレ-タ-として細胞傷害の制御に働いていると考えられた。しかし、これらの現象は内皮細胞に特異的ではなく、冠動脈平滑筋細胞でも同様に認められた。 (2)活性化血小板による内皮細胞傷害と脂質:血清脂質、特にLDLコレステロ-ルと血管障害との関連が注目されている。そこで、血小板による内皮細胞傷害に対する各種のリポ蛋く影響を検討したところ、予想に反してLDLは細胞傷害に関して相乗作用をしめさず、むしろ防御効果を示した。VLDLは影響をおよぼさなかった。今後、そのメカニズムについての詳細な検討を予定している。
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[Publications] 岸 幸夫,沼野 藤夫: "内皮細胞と血球の相互作用ー特に動脈硬化との関連ー" 血管と内皮. 1. 128-133 (1991)
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[Publications] Yukio Kishi Takashi Ashikaga Fujio Numano: "Phosphodiesterases in vascular endothelial cells." Adv.Second Messenger Phosphoprotein Res.25. 201-213 (1992)
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[Publications] Yukio Kishi Takashi Ashikaga Fujio Numano: "Inhibition of platelet aggregation by prostacyclin is attenuated after exercise in patients with angina pectoris." Am.Heart J.123. 291-297 (1992)
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[Publications] Yukio Kishi Takashi Ashikaga Fujio Numano: "Alteration of adenine nucleotide metabolism in coronary smooth muscle cells by activated platelets." Thromb.Res.(1992)
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[Publications] Yukio Kishi Takashi Ashikaga Fujio Numano: "Ethanol modulates cyclic GMP metabolism in cultured coronary smooth muscle cells." Angiology. (1992)
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[Publications] Yukio Kishi Takashi Ashikaga Fujio Numano: "Activation of cGMPーstimulated phosphodiesterse by atrial natriuretic peptide in vascular endothelial cells." Circ.Res.