1991 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜を介する情報伝達から見た高血圧の病態生理に関する研究
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02670405
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Research Institution | Wakayama Medical College |
Principal Investigator |
津田 和志 和歌山県立医科大学, 循環器内科, 助手 (90217315)
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Keywords | 本態性高血圧 / 高血圧自然発症ラット / 細胞膜流動性 / 赤血球 / カルシウム / ナトリウム / 食塩摂取 / 内因性ジキタリス様因子 |
Research Abstract |
細胞膜の物理的性質のひとつである細胞膜流動性(fluidity)は膜の可塑性や膜酵素活性を規定する重要な因子であり、各種の生理反応に関与すると考えられている。そこで本年度は本態性高血圧や実験高血圧の赤血球膜や一部培養血管平滑筋細胞を用いて、電子スピン共鳴およびスピンラベル法により膜fluidityの測定を行った。さらにCa^<2+>やNa^+をはじめとする電解質や内因性因子の膜機能に及ぼす影響についても考察を加えた。ヒト本態性高血圧や高血圧自然発症ラット(SHR)の膜fludityは正常血圧群に比し有意に低下していた。またこれらの変化は血圧が上昇していない若年期SHRにおいても観察されることや、二次性高血圧患者では有意な変化がないことより、高血圧の遺伝的素因に基づくものと考えられた。膜fluidityはCa^<2+>やNa^+等の電解質によって強く影響を受ける。赤血球にCa^<2+>ーionophoreを用いてCa^<2+>負荷を行うと膜fluidityは低下したが、その程度は本態性高血圧患者やSHRで大きく、Ca^<2+>拮抗薬やcalmodulin阻害薬の前処理により回復した。この成績は本態性高血圧やSHRでCa^<2+>に対して感受性が亢進していることを示している。一方、本態性高血圧の食事内容を減塩食にすると膜fluidityの低下は改善するが、高塩食下では再び低下した。食塩の過剰摂取は細胞内Ca^<2+>濃度を上昇させる可能性が報告されていることから、細胞内Ca^<2+>の変化が膜fluidityの低下を引き起こしたと考えられる。最近、高血圧患者の血漿中に内因性ジギタリス様因子(EDLF)が存在し、膜のNa^+,K^+ーATPaseを阻害することが明らかになった。さらに膜fluidityの低下とEDLF含量の間には有意な相関が認められ、EDLFもfluidity調節の重要な因子である可能性が示唆された。以上、高血圧の膜fluidityは正常血圧群に比し低下していたが、それらはCa^<2+>,Na^+,さらにそれらと関連した内因性因子によって強い影響を受け、機能的な変化が高血圧の構造上の膜異常に深く関与することが示された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Tsuda K,Masuyama Y: "Inhibition of norepinephrine release from the vascular adrenergic neurons by oral administration of βーblocker in DOCAーsalt hypertension" American Journal of Hypertension. 4. 68-71 (1991)
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[Publications] Tsuda K,Masuyama Y: "Effects of substance P on norepinephrine release from vascular adrenergic neurons in spontaneously hypertensive rats" American Journal of Hypertension. 4. 327-332 (1991)
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[Publications] Tsuda K,Tsuda,S,Goldstein M,Masuyama Y: "Effects of Bay K 8644,a Ca^<2+> channel agonist,on [ ^3H]norepinephrine release in hypothalamus of spontaneously Hypertensive rats" European Journal of Pharmacology. 194. 111-114 (1991)
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[Publications] Tsuda K,Masuyama Y: "Presynaptic regulation of neurotransmitter release in hypertension" Clinical and Experimental Pharmacology and Physiology. 18. 455-467 (1991)
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[Publications] Tsuda K,Shima H,Kimura K Nishio I,Masuyama Y: "Effects of ouabain on membrane fluidity of erythrocytes in essential hypertension ーan electron spin resonance studyー" American Journal of Hypertension. 4. 783-785 (1991)
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[Publications] Tsuda K,Tsuda S,Nishio I,Masuyama Y,Goldstein M: "Calcitonin geneーrelated peptide in noradrenergic transmission in rat hypothalamus" Hypertension.