Research Abstract |
【目的】心筋梗塞慢性期(OMI)の運動療法による運動耐容能の改善要因については,中枢効果と末梢効果の機序が考えられているが,中枢効果については一定の見解が得られていない.本研究は,運動療法の効果をanacrobic threshold(AT),心拍出量(CO),一回拍出量の経時的変化の検討から中枢効果の関与を推定することを目的とした.【対象】急性期リハビリテ-ションを終了し,慢性期にATレベルの運動療法を施行したOMI患者25人(男性19人,女性6人,平均62.4±10.35歳). 【方法】1.AT測定法:トレッドミルによるramp負荷を施行し,ミナト社製RMー300,MGー360にて呼気ガスをbre ath by breath法により採取し,ATを決定した.2.CO測定法:Morgan社製MAGNAー88型によるCO_2再呼吸法により,安静時,1ヵ月時のATの80%レベルのVO_2によるエルゴメ-タ-による単一負荷にて施行した.3ヵ月後には1ヵ月とに同量の負荷量(watt)にて測定した.【結果】1.AT値,peak VO_2は1→3ヵ月で増加傾向を示した.2.ramp負荷開始からATまで,およびpeakまでの運動時間はいずれも延長した.3.安静時心係数(CI)は,1.9±0.4,2.2±0.5L/min/m^2と延長(p<0.05)し,80%ATレベルも3.8±0.9,4.0±0.8L/min m^2と増加傾向であった.4.一回拍出係数(SI)は,増加を示し,安静時に有意差(p<0.01)が認められた.5.ATとCI,SI間には,正の相関傾向があり,特に3ヵ月のATとSI間には安静時R=0.67,運動時0.78と正相関を認めた.6.心室瘤合併例では3ヵ月後のAT,CIは低く,また経時変化も小であった.【結語】OMIの運動療法による運動耐容能改善要因には,CI,SIの増加がその一因になっていることが考えられた.また,心室局所の収縮異常示し,運動耐容能を低下させるとされる心室瘤合併例においてAT,CI,SIの増加は小さく,運動療法の心臓因子による改善要因,すなわち中枢効果の存在が推察された.
|